寝肥(ねぶとり)は江戸時代の書物「絵本百物語」にて紹介されている妖怪。
日中は普通の、場合によっては絶世の美女なのだが、夜になって眠りについた途端に豹変する。
体がどんどんと膨れあがり、異常なまでの肥満体になって最終的には座敷一杯に広がるほどの巨体になってしまうのだ。
さらにはいびきも雷が轟くような轟音になるそうで、美女が夜になる度にこのような化け物に豹変するのであれば、きっと百年の恋も冷めてしまう事だろう。同書には座敷一杯に広がってしまった寝肥の迫力ある、しかしどことなくユーモラスな姿が描かれている。
さて、同書には寝肥は別名を「寝惚堕」、俗に「寝はばかり」とも言う、と書かれている。いわゆる女性の怠け癖のことを指すもので、寝肥になる女性は必ず寝るときは大いびきをかくようになって色気がなくなり、全てにおいて騒々しくなって夫の愛想も尽きてしまう、とある。
このことから、寝肥は女性の怠け癖に対する戒めと、女性は常に身だしなみを整え慎ましやかにすべし、また男性もこのように結婚してから豹変するような女性を掴まないように、という注意から生み出された妖怪ではないかと考えられている。
(山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)