世界にはどのようにして建てたのか解らない建造物が多数存在している。例えばエジプトのピラミッドやペルーのマチュ・ピチュなど、当時の技術でどのように建てたのか解らない遺跡などがそうだ。だが、建築方法が解らないものは何も古代の遺跡に限った話ではない。近代の建築物でも謎に満ちたものは多数存在しているのだ。
アメリカはニューメキシコ州サンタフェに、19世紀に建築されたロレット・チャペルという修道院がある。こちらの礼拝堂は教会の2階にあるのだが、建築途中でそこまで登るための階段を設置し忘れた事に気がついた。後から足そうにも、階段を設置できるスペースがない。修道院のシスターたちは他の大工らにも階段が設置できないか頼んでみたが、誰にも不可能であった。
途方に暮れたシスターたちは祈りを捧げることしかできなかった。だが、9日めに一人の年老いた大工が教会を訪れた。彼はたった一人で一本の鋸とT型定規、金槌を用いて半年で垂直に伸びる螺旋階段を造ってしまったのである。不思議なことに、老人が作業している姿は誰も見たことがなく、また大工は作業を終えると報酬ももらわずに姿を消してしまったという。
この階段は不思議なことに、支えとなるものが存在していない。しかし強度は十分で現代でも日常的に使用されている。このような構造の階段の場合、支柱がなくては人間が昇り降りできるほどの強度が保てない、建築学上ありえないものだったのだ。そこで、あの老人はイエスの養父であり大工であった聖ヨセフの化身だったのだ、とする伝説が生まれた。
現在では、研究の結果ロレット・チャペルの階段は手すりになっている内側の螺旋の半径が小さいため、階段の構造の中に支柱が組み込まれているという説や、普通の階段よりも弾力がある特徴があるため、コイルバネのような原理で建っているという説が存在している。謎の大工も木工技術者であるフランソワ・ジャンという人物が正体ではないかとされている。
なお、ここで挙式したカップルはこの螺旋階段に登ることができるそうだ。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
関連動画
Loretto Chapel in Santa Fe, New Mexico with it’s Miraculous Spiral Staircase September 6, 2012