錬金術 その原理と起源

 錬金術では、万物は空気・火・土・水の四元素の組み合わせによって構成されていると解釈され、この四元素を組み替え、より高次の物質に変化させることを基本原理としている。
 賢者の石もこの四元素を活用して生み出される。

 その製法を簡潔にまとめると以下のようになる。

 まず大地に布を広げ、布が吸い取った大気中の水分を元にする。この水分を特殊な方法で幾度も蒸留していくと、不純物が除去され、純粋な物質となっていく。
 ここまでの工程で、土(大地)、空気(大気)、水、火(蒸留)の4元素の要素が含まれていることがわかるが、この先の工程にはかなり抽象的な概念も登場する。




 純化された物質をさらに蒸留していくと、太陽と月のエッセンスが抽出できる。太陽と月のエッセンスが何を指しているのかは不明だが、この両物質を結合させると賢者の石が精製できるのだという。

 賢者の石からは「エリクサー」という薬が抽出できるが、この液体に若返りや、不老長寿の力があると言われている。
 四元素の考え自体はアリストテレスが提唱したものであるが、錬金術が生まれた起源は不明な部分が多い。その起源をたどった時に行き着く重要な文献に、3世紀ごろにエジプトで書かれたとされる『ヘルメス文書』がある。

 『ヘルメス文書』は哲学や占星術、魔術など、多岐にわたる事柄を記した写本群で、計2万巻にも及ぶと言われる途方も無い規模の大書だ。この中で錬金術に関する記述も存在しており、錬金術の思想的な源流を見出すことができる。

 著者はヘルメス・トリスメギストスだが、神に近い伝説上の人物であり、実際はエジプトの神官たちが書いた書物だと見られている。だが、現存している『ヘルメス文書』には錬金術に関する項目はほんの一部しか残されておらず、どのように錬金術の技術体系が生まれたのかなどがわかる書物ではない。
錬金術が成立した過程を追っていく中で、謎が多いのが賢者の石やエリクサーの概念である。




 ヨーロッパやエジプトの歴史をさらにさかのぼっても、同様の概念が見当たらないのだ。このことを念頭に置いて調査範囲を広げると、中国に行き着く。
 中国では、『ヘルメス文書』よりも古い時代から、神仙丹(神仙は賢者であり、丹は石である)や辰砂(水銀の元となる鉱物、抽出した水銀には不老不死の力があると信じられた)の存在が語られており、これらが賢者の石やエリクサーの概念の元となったと考えられるのだ。

 また、錬金術において、液体状の金属である水銀は重要な物質だと考えられているが、その価値の置かれ方や、錬丹術として中国で知られていた精製方法と同一のものが錬金術でも使われているなど共通点が多い。
 つまり、中国で生まれた錬丹術の概念が、中東を経てエジプトと渡り、錬金術となってヨーロッパへと渡っていったと考えられるのである。

(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)

 

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