今まさにU・M・Aがブームである。
このUMA(未確認生物)人気が爆発した秘密を考えてみると、その背景には昭和という懐かしき日々への回帰現象があるのではないだろうか。
あの時代、オカルトといえば、アメリカ人農夫のコメントが何故か方言で吹き替えされてしまう「矢追純一氏のUFO番組」であり、ユリ・ゲラーが画面アップでスプーンをまげたり、TV局から送られたユリ・ゲラーの超能力で「時計が直った」「私にもスプーンが曲げられた」と電話が殺到したりする「奇々怪々な超能力特集」であり、見た後は必ず近所の山に探検に行ってしまったヒバゴンやネッシー、つちのこに代表される「ご近所の怪獣気分に浸れたUMA番組」であった。
セピア色した当時のオカルトは、まさに雑誌「冒険王」や「ぼくら」「TVマガジン」「サンデー」「マガジン」の怪獣や妖怪の付録や、世界の秘境探検、未来の都市生活などで飾られた特集記事のとんでも世界そのものであった。
無論、子供心にも到底信じられない内容だったが、どこか楽しくなってしまうから堪らない。それが近年の”カルト”とは違う、愉快な昭和オカルトの特徴であった。これらの脱力してしまう昭和オカルトは、成熟し汚れてしまった大人を、純粋なあの夏の日の子供に戻してくれる。仕事に疲れた大人たちの昭和への想いは、押入れの奥深くおもちゃ箱にしまったはずのUMAたちを復活させたのだ。
昭和末期から平成初期にかけて、我々日本人は身分不相応なバブルという好景気に浮かれ、踊らされてきた。その後、はかなく崩壊し10年以上不景気の長いトンネルをくぐることになった。しかし後遺症もあった、金や株に振りまわされた反動からか、アナログ全盛の「昭和」への憧憬とつながりつつある。
例えば、お台場や青梅ではレトロな町並みや懐かしグッズを中心とした町おこし運動が盛んとなり大勢の観光客を集めている。
また「三丁目の夕日」のようなノスタルジックな映画も人気を集めた。そして、アニメやドラマ、音楽でも昭和の名作のリバイバルが盛んになりつつある。そんな中で、オカルト界にレトロな旋風を巻き起こしているのがUMA(未確認生物)である。
ここではUMAブームの背景に見え隠れする昭和の残像を浮き上がらせてみたい。
まず第一に挙げられるのはUMAそのものの魅力である。携帯電話やインターネットの発達により逃げ場所のなくなった現代人にとって、密かに山中や海中に隠れ住む未確認生物が羨ましいのかもしれない。
つまり、UMAとは、現代人の自然回帰願望や、仕事からの逃避願望を具現化する対象であるといえる。個人情報が丸裸にされる現代、公私のしがらみから裸になって、自然の中で地球とたわむれたいのであろうか。なんとも痛ましい現代人ではないか。
また、昭和と共に破壊されてしまい忘却の彼方に去った自然を具現化したものがUMAなのかもしれない。言い換えれば、自然がUMAという形で人間に復讐しているのであろう。人に復讐する自然の怨霊であるUMAの中に、望郷の念を感じる現代日本人、明らかに不健全である。
【後編に続く】
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)
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