【実話怪談】しゃくじょうよこせ(津田沼鉄道連隊)

 私が今居住する千葉県にも軍隊の基地や駐留地が多く存在する。各部隊、各基地で怪談が語られていたらしい。言ってみれば、怪談を語る事自体が、古参兵による新兵いじめの一環であったともいえる。

 「うちの基地には、こんな話もあるんだぜ」
 「本当ですか?軍曹殿」
 今で言うと学校の怪談が先輩から後輩に語られるのと同様である。特に軍隊に多いのが(井戸の怪談)である。この井戸の怪談は各基地にあるらしい。まず、津田沼にあった鉄道連隊のバージョンを紹介しよう。現在、連隊の居た場所は某教育施設となっているのだが、基地があった当時は、新兵が門番に立つのが習わしだった。ある夜、昼間の訓練の疲れから、門番にあたっていた新兵がうっかり居眠りをしてしまった。




 「おい、貴様、たるんでおる!!」
 それを見咎めた上官は新兵を怒鳴りつけた。
 「はい、真にすいません」
 新兵は必死に謝ったが、上官は許さない。更に、新兵の持ってた銃の錫杖(しゃくじょう)を、基地内の井戸に捨ててしまった。
 「あっ、なにをするんでありますか」
 「早くとってこいよ、井戸に落ちてしまったぞ」
 上官はいやらしく新兵を見据えた。涙ぐんだまま新兵は俯いている。

 「貴様、天皇陛下からもらった銃なのだ。今すぐ、井戸に飛び込んでとって来い」
 と叱りつけた。これこそ、新兵いじめである。
 「はい、わかりました」
 敬礼して、銃の錫杖を取りに行く新兵。しかし、運が悪い事に、この新兵は泳ぎが出来なかった。それでも、上官の命令は絶対である。新兵は泣きながら井戸に飛び込み、銃の錫杖を探した結果、命を落としてしまった。その悲劇な事件以来、毎夜毎夜井戸の中から、悲しげな声が聞こえた。
 「錫杖かえせ~、錫杖かえせ~」

 新兵の亡霊は、今も井戸の中で落し物を探している。他にも井戸に纏わる怪談には、こんな話がある。ある部隊で、新兵たちが門番についていた。二人の兵隊で一箇所の門を夜警するのだが、一人は新婚であり、新妻が毎晩のように夜食をさし入りに来ていた。
 「畜生、あいつはいつも愛妻弁当かよ。しかも、いい女だし」
 門番を務める相方の新兵は、その様子が面白くない。
 (ようし、今度着たらあの新妻を犯してやろう)嫉妬に狂ったその兵隊は、ある夜いつもように相方の兵隊に夜食を持ってきた新妻を草むらに引き込み犯そうした。
 「やめてください。大声を出しますよ」
 新妻は激しく抵抗した。
 「うるさい、静かにしないとこうしてくれるわ」




 新兵は、新妻の首をしめて殺害してしまた。このままでは軍法会議にかけられて銃殺刑に処せられてしまう。困惑しながらも、遺体を背中に背負い、そっと基地の中にあった井戸に放り込んで、何食わぬ顔をしていた。新妻が行方不明になり、部隊の中でも様々な噂が流れたが、そのうち女の声が井戸から聞こえるようになり、井戸をさらった結果、遺体が発見され程なく殺害犯の男が逮捕されたという。

(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)

 

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