2017年の干支は酉。年始のお参りに、鶏や鳥類に関した場所へ行ってみるのはいかがだろうか。
和歌山県の熊野地方では、神話にちなんで烏が信仰対象になっている。神武天皇が東征の折、熊野に差し掛かった時に熊野の山々に住まう荒ぶる神々が立ちふさがり、前に進めなくなった。この時天から道案内として使わされたのが、熊野に住んでいた八咫烏だった。
八咫烏の八咫とは大きさを示す言葉であり、人知を越えた大きさの烏という事で聖獣として扱われたようだ。おそらく、この八咫烏の伝説には中国で太陽の鳥とされた烏の伝説や太陽神に対する土着信仰が関わっていると見られている。この神話から熊野では烏は導きや契約の神として信仰されるようになり、現在でも神鳥としての姿を護符やシンボルマークに見てとることができる。
同じように烏にまつわる神社としては、東京都内の烏森神社がある。烏森神社は平将門の乱が起きた際、平定に赴いた藤原秀郷が武蔵国のある稲荷神社に祈願したところ、白狐が白羽の矢を携えて現れた。その矢を用いた秀郷の活躍もあり、将門の乱を平定することが出来たため、秀郷はお礼として稲荷神社を創建しようと考えた。
すると、彼の夢の中に白狐が現れ、近くに神の遣わした鳥が群れている所があるので、そこに稲荷神社を建立するようにと告げたのである。果たせるかな、秀郷は桜田村にて烏が群がっている森を見つけ、そこに現在の烏森神社を建立したのである。この伝説でも神様の遣いとして烏が、また稲荷の眷属である白狐も登場する。心中たちに見守られているせいだろうか、烏森神社は都会の真中にありながら、いつもそこだけ落ち着いた静かな空気を漂わせている。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
※画像は熊野神社HPより