【実話怪談】紅いネイル

 ある企業で営業職として働いている人の話だ。

 彼は毎日、多くのお得意様の所へ社用車を運転していく。

 その日も外回りをしていた彼は、道中で信号が赤になったので車を停止させた。後ろの車も彼の後に続いて停まる。

 この時、少し車間距離が狭いな、と感じたらしい。とはいえ、煽っているような様子でもなく、たまたま詰まったのだろうと思っていた。

 バックミラーで確認していたのだが、ふと後ろの車の運転手が気になった。

 その運転手は首にマフラーを巻いているように見えた。

 時期を考えると、そろそろ梅雨も明けて本格的な夏になる頃である。実際に彼自身も車内ではエアコンを効かせて上着を脱ぎ、半袖シャツの状態でいる。当然、後続車の運転手も半袖の服であるにもかかわらず……

 よく見ると、マフラーと言うよりもコルセットやハイネックのように首にぴったり張り付いているようにも思えた。服とも色や生地も違うように見えるし、さて何だろうと、思案すると・・・。

 それが何か判った途端、彼は急に背筋に寒いものを感じたという。

 どこから現れたモノなのか、マフラーでもコルセットでもなく、その運転手の首には細い10本の指がしっかりと締め付けるような形で巻き付いていたのだった。しかも、やや半透明の白く指先に、赤系のネイルがあるのが印象的だったという。

 やけに目立つ赤系ネイルが塗られた爪が首に食い込んでいるように見えたのが印象的だった。

 その車は青信号になった所で、交差点で左折して行ってしまい、その後どうなったか、彼は知らない。

 ただ、町中で妙に赤いネイルをした女性を見る度、彼はあの運転手の首に巻き付いた手を思い出してしまうという。

(山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)

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