ここに掲載された写真をご覧頂きたい。
木に苦痛にもがき苦しむような表情の顔が浮き出ている。よく見ると、数人の顔にも見える。人の顔が浮き出た木を人面木という。
筆者はこの写真をイタリアで最も有名な観光名所であるベネチアのマルコ・ポーロ広場近くにあるドゥカーレ宮殿の裏にある公園で撮影したという。
ドゥカーレ宮殿はヴェネツィア共和国の総督邸兼政庁であった建造物で、8世紀に創建され、14世紀(1309年)-16世紀にかけて現在の形に改修された。
この公園はちょうどドゥカーレ宮殿にある牢獄の正面に位置する。牢獄は今は観光用に解放されている。
ドゥカーレ宮殿の牢獄の囚人は「ベネチアのゴンドラ」に乗せられ、「溜め息橋」を渡り、拷問を伴った取り調べを受けて死ぬまで牢獄に入れられるた。「溜め息橋」はRio di Palazzoを渡り、ドゥカーレ宮殿の尋問室と古い牢獄とを結んでいる。
今はカップルのデートスポットで「永遠の愛」の象徴でもある「溜め息橋」の本来の語源は、決して美しい景色を見てつく溜め息ではない。ゴンドラに乗せられた囚人が人生で陽の目を見る最後の瞬間につく「溜め息」なのであった。
筆者はこの写真を撮影した瞬間に異様な気配と悪寒を背後に感じた。
振り返ると、背後の牢獄の窓にガリガリに痩せ細った青白い顔の男性が顔をのそがせた。
その時にシャッターをきったのが、この写真である。
写真の右下の窓から顔を覗かせた青白い男性の顔がお分かりだろうか?「観光客では?」と思われるだろうが、その時の異様な気配はこの世のものを感じさせなかったのだ。
やはり、不幸にも牢獄で亡くなった今も現世をさ迷う囚人の霊だったのだろうかー。
(深月ユリア ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)