現代妖怪「ひきこさん」と「ひきずり女」





 現代妖怪に「ひきこさん」というキャラクターがいる。

 恨みを抱く相手の足を持ってひきづり廻して殺してしまうという凶悪な妖怪であり、映画やコミックに度々登場している。

 この「ひきこさん」の成立はどのような経過を辿ってきたのだろうか。90年代末期に筆者が運営していたサイト妖怪王には「ひきづる幽霊」という投稿がなされている。匿名希望(50代 男性)が話を聞いたのは90年代初頭だと証言している。

 以下、その内容を紹介してみよう。

「これは、江戸川区の篠崎インターから千葉県の船橋イン ターまでにかけての高速小松川7号線に出る妖怪である。最初はごく普通の体で高速道路の路肩をはってるが、徐々に体の一部がずるりずるりと落ちていくというのだ。あしがもげ、内蔵が落ち、そして最後には腕だけになって船橋に着くという」

 この投稿においては妖怪そのものが、肉体がもげていき最後は腕だけになっている。それが犠牲者が最後に肉塊になるという設定になれば、「ひきこさん」の原話になりうるのではないだろうか。

 もうひとつ「ひきこさん」の原型になったと思える映像作品がある。

 それが中田秀夫監督の『女優霊』(じょゆうれい)(1996年)である。この映画は後に世界的な大ヒットとなる『リング』につながる作品と言われており、ストーリーの山場で 柳ユーレイが扮する登場人物が幽霊に引きづり廻されている。この映像の与えたインパクトが、「ひきこさん」成立に影響を与えた可能性が高い。

その後、2000年代に入り都市伝説サイトにちらほら「ひきこさん」の初期タイプの話が掲載されるようになった。但し、初期タイプの話は簡単なものであり、人間を引きづり廻すという単純な設定のみであった。この頃の初期タイプの投稿は一部の人間が意図的にあちこちに投稿し拡散しているように見えたのも事実である。




 この時期、筆者はブログ妖怪、サイト妖怪王を同時運営していたのだが、そこに「ひきづり女」という話が投稿された。

 この話は投稿者の実体験という形で投稿されたのだが、内容は実体験だけにかなり細かいディティールであった。

 いじめられっ子に毎日苛められていた女の子がいた。雨の日の下校時にいじめられた女の子は道路に飛び出してしまい、暴走 してきたトラックに巻き込まれ、車に引きづられ死亡した。以来、女の子の霊は妖怪「ひきづり女」となってしまい、雨の日に出現してはいじめっ子を引きづり廻して肉塊になるまで引きまわしたり、暴走トラックの助手席に乗りいじめっ子を轢き殺したという。

 筆者はこの「ひきづり女」の情報を、2004年に雑誌「衝撃王」に発表、2005年には「奇妙なウワサ・怖い話」(リイド社)という自身が監修するコンビニコミックにも掲載した。

 この「ひきづり女」は名称そのものはコメディアンの間寛平のギャグ「ひきづり女」の影響を受けているものと思えるが、「ひきこさん」とかなり近い妖怪と思えた。

 どうもこの「ひきづり女」と「ひきこさん」の初期タイプが合体した結果、洗練され た「ひきこさん」の伝説が出来た可能性が高い。つまり、「ひきこさん」の足らない情報を「ひきづり女」が補填し、フォークロアとして進化していったようなのだ。

 やはり、妖怪とは経年と共に、情報が交じり合いながら、より深く洗練されていくことで未来にデータを残していくのであろう。

(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)




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