以前、ピエール瀧さんの「ゴーストフィルム」(beeTV)という番組で奇妙な体験をしたことがある。
この時の収録は筆者や中山市朗氏がぞれぞれ怖い話をピエール瀧さんに聞かせるといった主旨であったが、僕がピエールさんの前に出ていくと、突如彼の方から怖い話をし始めたのだ。
その話というのが不可解なものであった。
或る年、ピエールさんが所属する電気グルーヴのライブが広島で開催されることになった。その前日に事務所のスタッフ2名がトラックで前のりした。
二人共広島は土地勘が無いはずであったが、ハンドルを握っていたA君はぐんぐんぐんぐん道を選んで走行していく。
(あれ、Aくんは広島の道を知っているのか)
助手席に座っていたB君はそう思ったのだが、段々と道は山深くなっていく。
「おいおい、A君、ライブ会場はこんな山の方なのか」
Bくんが聞いてもA君はどんどん山中に入っていく。そして、車が行き止まりに突き当たった。その時、A君ははっと我に返った。
「あれ、なんでこんなとこにいるんだろう」
「A君、大丈夫か、今まで意識がなかったのか」
二人が仰天していると、ヘッドライトが墓石を照らし出した。
実はその墓石とは、ある事故を誘発した呪いを誘発した墓石ではないかと言われているものであった。
1991年3月14日、広島県広島市安佐南区で悲惨な事故が発生した。
現場では広島市の新交通システムの建設が行われていた。だが不幸にも橋桁が真下の道路に落下してしまい、建設作業員と信号待ちをしていた自動車数台が下敷きとなり、14名が即死する結果となってしまった。(事故当時に重体だった1名が後日亡くなったことで、死者は15名となる)
この14名即死事件を受け、地元では不気味な噂が流布された。実はこの建設現場において、元々あった14個の墓石を山間部に移設したという経過があったため、
「移動させられた14個の墓石の祟りで14名が即死したのではないだろうか」
と囁かれたのだ。
しかも、この事故の発生日は、14日であり、時間は14時過ぎであった。また事故現場の新交通システムの最寄駅は始発から14番目であり、間一髪で事故に巻き込まれなかった幼稚園バスに乗っていた幼児の人数も14名であった。
この14という数字に纏わるシンクロは、やはり14個の墓石が招いた祟りによるものであろうか。
因みにこの事故で助かった幼稚園バスは定刻どおりに走っていたら、確実に橋桁の真下にいた可能性が高いという。
その日に限って「おしっこがしたい」と言い出した子供がいて、途中パチンコ屋さんでトイレを借りたため、一分ぐらい遅れて走行していたのだ。
まさに奇跡ということだが、その”奇跡の子供”が誰だったのか、搭乗していた幼児の保護者や運転手、付き添いの先生、誰も思い出せないのだ。こんな不思議な事があるのであろうか。
ピエール瀧さんが、自分のスタッフの体験を話し終えた後、筆者は聞いてみた。
「ピエールさん、何故僕にこの話をしたんですか」
すると彼は戸惑いながら応えた。
「いっ、いやなんとなく話したくなって…」
実は筆者が大学を卒業し、日本通運に入社し始めて配属された部署の上司がこの橋桁の現場担当者であった。事故の前に転勤し、筆者が配属された部署の管理職になっていたのだ。
こんな偶然もあるのだ。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)