事件

警官が突然、遊女たちを刃物で襲った!「吉原遊廓巡査七人斬り事件」

金を積んでようやく会えた太夫に袖にされ、後に花魁を妖刀村正で斬り殺し…というのは歌舞伎の演目「籠釣瓶花街酔」の筋書きである。この演目は実際に江戸時代に起きた吉原での刃傷事件を題材に脚色して作られたものだ。

そんな男と女の愛蔵渦巻く吉原で、明治時代に7人が殺害される事件が起きた。

事件が起きたのは1880(明治13)年7月23日の昼過ぎのこと。

吉原の江戸前二丁目「杉戸屋」に一人の若い男が人力車で乗り付けた。そして、着ているものを脱ぐと褌(ふんどし)一丁の姿になって「いつぞや受けた恥辱の仕返しだ」と叫ぶと、店の関係者や娼妓達を切りつけていったのである。

一人の娼妓が腕を切りつけられたものの、腕に噛み付いて武器の短刀を奪い、「人殺し」と叫びながら逃げた。やがて、騒ぎを聞きつけた巡査によって男が逮捕され、店の7人が殺害された事、そして犯人もまた巡査であった事が判明した。




犯人の徳永敏は酒が入ると豹変する男であり、過去に酒での失敗で兵庫県庁をクビになっていた。後に警官として復職したのだが、吉原に友人と共に出向いた際に泥酔して遊び倒し、所持金が足りなくなってしまう。

その場で店の者に罵倒され、足りない分を支払うために取り立て役の付け馬と共に宿舎へ帰ったのだが、士族としてのプライドが傷つけられた彼は、一旦付け馬を店に返すと職場を無断欠勤し、酔ったまま短刀を買い求めて血みどろの復讐劇を繰り広げたのだった。

(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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