悲しき人造人間がいつしかモンスターへと変貌する「フランケンシュタインの怪物」

 『フランケンシュタイン』、この怪物は小説で生まれた存在であった。作品の中で主人公・ヴィクター・フランケンシュタインは学生であったが非常に優秀で、遺体をつぎはぎすることで人造人間を作り上げることに成功した。つまり、本来『フランケンシュタイン』とは、化け物の名前ではなく、それを生み出した主人公の名前であり、それがいつしか創造した巨大醜悪な生きものの名前を指すようになった。




 その外見は2m以上の巨体であり、側頭部に電極のようなものが埋め込まれており、落雷などのショックにより動き始めた。顔にはつぎはぎのような傷跡があるが、性格は極めて温和であり、知的レベルが高く数ヶ月で言語を覚えたりする。作品によっては、生まれつき凶暴であり、怪物の知性が低いとされることもある。現在の怪物じみた人造人間としてのフランケンシュタイン像は、むしろ原作を元に後世の人々が創作した近代のホラー映画などによって生み出されたものと言えるだろう。

 1816年5月、スイス・ジュネーヴ近郊のレマン湖畔のディオダティ荘にイギリスの小説家・メアリー・シェリーは、詩人のパーシー・シェリーと駆け落ち滞在していた。バイロンやその友人のジョン・ポリドリも滞在していたのだが、その時長雨の退屈しのぎに作ったのが『フランケンシュタイン』であった。また、ポリドリは、バイロンが残した謎めいたメモを参考に『吸血鬼』を書いた。この小説が『ドラキュラ』として舞台化などされるようになった。ある意味、『フランケンシュタイン』と『ドラキュラ』は同じタイミングで、同じ場所で生みだされたのだ。




 だが、製作者であるフランケンシュタイン博士は、実在の人物だったという説も流れている。実は18世紀に書かれたヴィクター・フランケンシュタインの日記というものが存在しているのだ。人造人間を創造していく過程を詳しく日記に書いている内容なのだが、その日記はフェイクという分析もある。

(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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