千葉県で老人ホームを経営されている方から聞いた話である。不思議な現象をまったく信じない人の発言だけに、筆者は戦慄した。怪異は現実に存在する。
彼は若い頃、土建業で成功を収めた。
「よし、成功した分あとは、社会に貢献したいね」
当時から信心深かった彼は、地元のお稲荷さんの土木工事をボランティアで行った。彼はこの稲荷で、石材の移動や修理などを頻繁に行っていた。すると、工事後突然手足が痺れて動かなくなった。
「うっ、なんだか体の自由がきかん」
「どうしたんだね、大丈夫か」
仲間たちが助けてくれたものの、手足が痺れて、全身がマヒしたように動かない。いったいどういう事なのか、わからなかった。
「なんだか、理由はわからないが、体がなまりのように重い」
彼はガマガエルのように、地面にへたり込んだ。周囲の人間は、仰天した。
「お稲荷さんが怒っているんじゃないのか」
「でも、俺は信心深い人間だし、今日の作業で無礼があったとも思えない」
彼は考えたが理由がわからなかった。『まさか、信心深いはずの自分に何の不敬があるはずもない』、そう思い込んでいたのだ。
結局、車に乗せられて帰宅したが、3日経っても事態は好転しない。
「これは、やはり霊障じゃないのかね」
友人たちは心配し、知人の霊能者に見てもらうことになった。
すると、霊能者が思わぬことを言った。
「お稲荷さんが怒ってますな」
やはりお稲荷さんが怒っているという。霊能者は言葉を選びながら続けた。
「不浄な場所にいった服装で、境内に入ってはおらぬか」
よく考えてみると、はたと思い出した。お稲荷さんの工事の前日に便所の解体を行っており、同じ作業着でお稲荷さんの工事をしたことを思いだしたのだ。
「はい、確かに前日便所の解体ではいた作業着で稲荷の工事をやりましたね」
しかし、この霊能者は前日に彼が便所の解体を行ったことなど知るよしもない。やはり、お稲荷さんのお告げがあったのであろうか。
早速、神社に謝りに行くと、症状は改善されたという。
(聞き取り&構成 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)