世界中で報告されている奇蹟に「聖痕現象」というものがある。
イエス・キリストは手足に釘を打たれ、磔刑に処された。しかし、3日後に復活して天へと昇ったとされている。そんなキリストが受けた傷と同じような傷がひとりでに出現する現象を「聖痕現象」と呼ぶ。
最初の聖痕現象は1224年にイタリア・アッシジの聖フランチェスコで起きたという。それから現代に至るまで、実に400人以上もの人々の身に聖痕現象が起きたと報告され続けている。中には、50年にわたって、手足から血が流れ続けたピオ神父の事例も存在している。
聖痕現象には共通点があり、キリストが受刑時に受けた傷と同じ箇所、手のひらや足などから出血するという点、多くの場合出血する日が復活祭前の金曜日であるという点などが報告されている。
なお、傷の有無や受傷時の痛みなどには個人差があるようだ。血だけが流れ出すケースや激しい痛みを伴うケース、傷が現れ大量に出血するが痛みは感じないといったケースも存在している。
それまで何もなかったところから出血するという聖痕現象の起きる原因は何なのだろうか。
キリスト教徒以外に出現したという報告例も無いため、やはり奇跡なのだろうか?現在では、調査の結果その多くが心因的な要因に寄るものではないかとみられている。
聖痕現象は16~17世紀に非常に多く報告されており、一種の社会現象になったとみられている。人々の注目を集めるため、自傷を行って奇跡を演出した事例や、強烈なストレスや自己暗示によって発生した皮下出血を聖痕とみなした事例も存在するとみられている。
自己暗示や自傷が原因とみられる最大の要因は、聖痕現象が現れた人の傷の形や出血部位の存在だ。キリストは大半の絵で手のひらに釘を打たれて磔刑になっているが、後年の研究結果では、手のひらでは体重を支えられないため手首に釘を打たれたと判明している。また、使用された釘も丸い釘ではなく、四角だったとされている。もし本当にキリストの受刑時と同じ傷であったならば、手首から出血していないとおかしいはずである。
他にも皮膚を軽くひっかいただけで痕が赤く浮かび上がる一種のアレルギーである皮膚描画症、色汗症、毛細血管が皮膚の破壊によって異常に拡張し出血しやすくなる毛細血管拡張症など、何らかの病気を併発していた可能性も存在している。
「聖痕現象」には様々なケースが存在しているが、完全に奇跡と呼べるものはなかなか見つけにくいようだ。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)