ケンジントン・ルーンストーンとは、アメリカのミネソタ州中央部ケンジントンで発見された石碑である。発見場所にあやかり「ミネソタ・ルーン石碑」などとも呼ばれており、ルーンとは石碑に刻まれているルーン文字を指す。
1898年、オロフ・オルソン・オーマンと言う人物が所有地の木の伐採をしていたところ、背の低いポプラの木の根元に砂岩の石板を発見した。高さ30インチに幅16インチ、厚さ6インチほどのその石板にルーン文字が刻まれていたことに気付いた彼は、ケンジントン近郊の新聞社へ持ち込み文字の翻訳をしてもらった。
その結果、碑文には1362年の銘が記されており、ヨーロッパ人が北米に足を踏み入れるよりも100年以上前のバイキング遠征について書かれていた。
ルーン文字は、北欧を中心にイギリス、アイルランド、グリーンランド、ギリシャ、ユーゴスラビアなどの範囲で使用されていたと言われているが、アメリカでは使用されていなかった。この石碑は、ルーン文字を使用する圏内の人々要するにバイキングがアメリカ内陸部にまで到達していた証として、1940年代にはスミソニアン協会に認められた。
実は、アメリカ大陸の発見者はクリストファー・コロンブスではなく、バイキングであったレイフ・エリクソンであると言われており、コロンブスのアメリカ大陸発見よりも500年早い西暦997年に既に到達していたという説が存在するのだ。このことから、バイキングがアメリカ大陸に足を踏み入れたことはほぼ確実とされ、このため使用圏外であるはずのアメリカの地にルーン文字の石碑が残されているというのである。
しかし、この石碑については真贋論争がたびたび巻き起こっていることも事実である。地質学の調査によると、この石碑は少なくとも19世紀以前のものであるという結果が出たものの、それ以上のことはよくわかっていないのが実情だ。
実は、アメリカでは考古学的な証拠が発見されるよりも前から、北米などで確認されたバイキングの遺跡などに対して強い関心を寄せていたと言われている。19世紀末にはノース人(古代スカンジナビア半島に住んでいた人々)が船で海を超えてやってくる姿を描いた絵画が多く制作され、さらには歴史的な事実が無いからという理由で創作も多くされていた。
それらの中には、偽古地図とされる「ヴィンランド・マップ」や偽物の武器などがあるため、このルーンストーンもこれらと同様の経緯で作られた偽物ではないかとの説もある。
少なくとも今のところ言えることは、ミネソタ州の多くの人々にとってはケンジントン・ルーンストーンは本物以外の何者でもないという強い信仰があり、高さ25フィートに及ぶルーンストーンを模した花崗岩のレプリカが、高さ28フィートのバイキング像とともに「アメリカ発祥の地」として現地で誇らしく展示されているという事実だけだ。
【参考記事・文献】
並木伸一郎『神々の遺産オーパーツ大全』
バイキング、知られざるその壮大な歴史
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/012400024/
バイキングの遺跡、カナダ東部の島で発見
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/040500122/
【文 ナオキ・コムロ】
画像 ウィキペディアより引用