タレント兼ラジオパーソナリティとして高い人気を誇っている伊集院光。その独特の一人語りは辛口ぶりも相まって熱烈なファンを多く生み出しており、その話術はダウンタウンからも一目置かれるほどであり「ラジオの帝王」の異名をも持つ。
現在では意味合いが変容してしまった中学2年生ごろによく見られる特有の言動を指す「中二病」という概念を大きく広めるきっかけを作ったとも言われている。
三遊亭楽太郎(のちの6代目三遊亭圓楽)の弟子であり、ラジオ出演をきっかけとして落語家とパーソナリティの二重活動を行なっていた。楽太郎は容認していたものの、大師匠であった5代目圓楽にバレてしまった際は一門を揺るがすほどの騒動にもなったという。
だが、自身が破門になりかねない状況下になっても楽太郎は伊集院の活動を擁護し続け、のちに彼のラジオ番組に6代目圓楽が出演した際には、「師匠と思ってくれている間は弟子で良い」との言葉を残したという。
さて、彼は御朱印集めやスタンプラリーを趣味としているようであるが、スタンプラリーの景品やそのキャラクターについては一切興味を持っていないことから、御朱印集めもシンプルに”集める”ということが好きであるということがうかがえる。
そもそも、当の本人は神仏を一切信じていない「無神論者」「無宗教者」を公言しており、オカルトに対しても否定的であるとのこと。そのせいもあってか、御朱印帳でスタンプラリーを集めるといったある種の暴挙を、面白そうだからという理由で行なったこともあるという。
ただ、そうはいっても伏線や前触れを表す「フラグが立つ」ということについては、少々信じている気があることは認めており、全否定というスタンスともまた異なっていると思われる。
そのような彼とオカルトとの関連にまつわる話題としては、『赤いクレヨン』が最も有名だろう。ある中古物件を購入した夫婦が、あるきっかけで間取図にはない隠された部屋が存在していることに気付く。意を決して該当箇所の壁をはがしてみると扉が現れ、恐る恐る開けてみると壁一面に赤いクレヨンで「おかあさんごめんなさい」と書かれていた。
現在でも有名な怪談および都市伝説として知られるこの話は、1997年ごろに、伊集院が『山田邦子のしあわせにしてよ』というバラエティ番組内で怖い話の企画の際に語った完全に創作の怪談であるという。このことは当人も公言しており、内容も当初は「伊集院の不動産屋の友人とその知人」「青いクレヨン」「おとうさんごめんなさい」であったなど、知名度を高めた結果様々に派生していき、尾鰭がついていったということが解っている。
彼によれば、「面白い話を作り、面白く喋る」ことが自身の修行になるということから、このような創作怪談を披露したということであるが、オカルト芸人として扱われたり、心霊話としてもっともらしい解説がつけられたりしたことに嫌気がさし、現在ではほぼ自身で披露することはなくなったという。
この『赤いクレヨン』については、類似した話が江戸川乱歩の短編小説『お勢登場』(1926)に描かれていることも示唆されている。
この話は、妻お勢の不倫と自身の病に苦しんでいた格太郎が、子供の遊びに付き合っていた中で、長持(民具の箱)の中に隠れたが、閉めた拍子に錠がかかってしまい出られなくなってしまった。しばらくすると、彼の唸り声に気付いたお勢が長持の蓋を開けたが、格太郎の期待もむなしくお勢は再び錠をかけてしまい、そのまま彼は息絶えてしまった。数時間後に彼は死体となって発見され、その長持の蓋の内側にはひどく掻き毟った痕と共に「オセイ」という3文字が刻まれていた。
一説では、この乱歩作品が『赤いクレヨン』のもととなった話ではないかとの意見もあるようだ。とは言うものの、これについては憶測の域を出ておらず、偶然に似ていたにすぎないとする声もある。
【参考記事・文献】
伊集院光、オカルトや宗教の信心はないのに「フラグが立つ」ことはつい考えてしまうと語る「ああ、これ脳が出るやつだ」
https://sekasuu.com/blog-entry-20687.html
赤いクレヨン
https://dic.pixiv.net/a/%E8%B5%A4%E3%81%84%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%A8%E3%83%B3
伊集院光
https://dic.pixiv.net/a/%E4%BC%8A%E9%9B%86%E9%99%A2%E5%85%89
赤いクレヨン(都市伝説)
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/16182.html
お勢登場/江戸川乱歩=誰もがお勢?欲望と保身と世間体のバランス。
http://nanatoshi.com/book-report303/
【文 ZENMAI】
画像『江戸川乱歩妖美劇画館 2巻 (『白昼夢』『人間椅子』『芋虫』『お勢地獄』『巡礼萬華鏡』『お勢登場』) (SGコミックス)』