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その発音、実は間違いだった?「エベレスト」の命名にまつわる複雑な事情

世界で最も高いこの山の名前は、この山とはほとんど直接関係のないインドのイギリス人地理学者、ジョージ・エベレストにちなんで付けられた。しかし、彼がエベレストの姿を見たことがあるかどうかさえ疑わしい。

名誉なことであることは間違いないが、この名前はヒンディー語で書くのが難しく、多くのネイティブ・スピーカーが発音しにくいと感じたため、当の彼でさえ自分の姓にちなんだ山名をつけるのは良くないと考えていたという。

しかし、この名前に苦労したのは地元の人々だけではない。あなたが「エベレスト」を口にしたことがあるのであれば、おそらくそれは全く間違った発音をしていたことだろう。

アメリカのオンラインマガジン『Mental Floss』によると、ジョージ・エベレストは自分の姓を「EVE-rest(イヴレスト)」と発音し、最初の音節は「EVER-est(エヴァーエスト)」や「EV-rest(イヴィレスト)」ではなく、「sleeve(スリーヴ)」や「breathe(ブリース)」と韻を踏んでいた。

【なぜエベレストはジョージ・エベレストにちなんで名づけられたのか?】

エベレストという山の名前がジョージに因んで命名された理由は奇妙なものだ。そもそも彼は、植民地時代に行なわれたという最初の公式測量の際にも一切の関係がなかったからだ。

ジョージは、1830年から1843年までインド測量総監を務め、インド亜大陸全体を科学的な精度で地図化する任務であるインド大三角測量で重要な役割を果たした。ヒマラヤ山脈の一部を含む、巨大な地形で埋め尽くされた広大で多様な土地であるため、プロジェクトの完了には70年近くを要した。

ジョージがこの調査の指揮を執っていた頃、この”摩天楼”は単に「ガンマ」、次いで「ピークB」、そして後には「ピークXV」と呼ばれるようになっていた。

ピークXVの高さがインドの数学者ラダナート・シクダーによって計算され、世界最高峰であることが明らかになったとき、プロジェクトを率いていたのはジョージの後継者であるアンドリュー・スコット・ヴォーだった。

その記録的な信憑性に気づいた権力者たちは、山の名前を変える時が来たと感じた。1856年、ヴォーはヘンリー・トゥイリエに手紙を書き、この壮大な山に彼の前任者であり敬愛する師ジョージ・エベレストの名前をつけるべきだと提案した。

「私は尊敬するチーフ兼前任者であるジョージ・エベレストから、あらゆる地理的対象にはその土地または国の真の呼称を付けるよう教えられました。しかし、ここにある山は、おそらく世界で最も高い山であろうにもかかわらず、現地での呼び名がありません。仮に固有名があるとしても、我々がネパールに入り、この巨大な雪の塊に近づくことを許されるまでは、その呼び名が判明することはないでしょう」

「この高峰に地理学者の間で知られるような名前をつけ、一般的な呼び名とすることは、私に与えられた特権であり義務でもあります。私の親愛なる敬意の証として、そして正確な地理学的研究の輝かしい巨匠の記憶を永続させるために、私はこの高貴な峰に”エベレスト”と名付けることを決意しました」

この名称は世界の一部で定着し、(理由は不明だが)発音に少し手を加えただけで、人々の意識に埋没してしまった。

【エベレストの改名】

多くの場所で、エベレストの山名が異なっていることは指摘しておく価値がある。ネパール語では、エベレストは”天空の額”を意味するサガルマータと呼ばれ、チベット語では”大地の母なる女神”を意味するチョモランマまたはコモランマと呼ばれている。

これに敬意を表し、この山を正式に改名しようという声も上がっているが、その要求はほとんど聞き入れられなかったようだ。北京にある中国チベット学研究センターの高名なチベット学者、ゲレク氏は2002年、中国メディアにこう語った。

「コモランマが世界中の人々にとって、地球上の最高峰を指す唯一の言葉になれば、チベット人として、私は非常に満足を感じるでしょうね」

【文 にぅま】

Glorious Himalaya Trekking Pvt Ltd.によるPixabayからの画像