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有名ドラマの元にもなった「チャップリン」の奇妙な体験

画像『チャップリン自伝: 若き日々 (新潮文庫)

1964年に出版された喜劇王チャーリー・チャップリンの著書『チャップリン自伝』は、出版された途端に世界各国でベストセラーとなった。19世紀末のロンドンで生まれた極貧の少年が、数々の苦難を乗り越えながら舞台俳優としての頭角を表していく様を描く本書は、ドラマに満ちた冒険小説のようでもあるとの評価もされている。

この自伝の中には若き日のチャップリンが体験した奇妙な出来事についても記されている。

当時10代であった彼は、舞台化されたシャーロック・ホームズの端役でブレイクしており、移動劇団でイギリスを地方巡業していた。エブー・ヴェイルという町の安価な宿屋に泊まった時のこと。ある日の夕食後に、彼は宿屋の主人から「見せたいものがある」と台所に招き入れられた。連れられた彼がそこで見たものは、食器棚から這い出してきた足の無い男であった。

その男は、どうやら主人の息子であったらしく、肥満で金髪、平たい頭につぶれた鼻と大きな口をしており、そして病的に白い顔色をしていたという。男は父親に急き立てられ、その筋肉質の腕を使って様々な曲芸を披露し始めたのだ。

「ギルバード、跳べ!」と父親が言うと、腕の力で跳んだその男のジャンプはチャップリンの頭の高さにまで及んだという。そして、「サーカス向きではありませんか?カエル人間とかどうでしょう」という問いかける父親であったが、チャップリンは恐ろしさのあまり呆然としてしまい、なんとかいくつかのサーカスの名を挙げると、父親は必死にメモを取っていたという。

チャップリンが目撃した「カエル人間」は、漫画『ブラックジャック』などでも描写された「無脳症」の人間ではないかと考えられる。多くの場合は、長く生きることはほとんどないと言われているが、自伝で語られているこの人物は、それに比べると非常に長く生きていた人物ではないかとも考えられる。

さて、このチャップリンの奇妙な体験は、1990年代からおよそ10年に渡りアメリカで制作されたテレビドラマ『X-ファイル』(The X-Files)のある一話のモチーフになったと言われている。




「HOME」というタイトルのその回は、ペンシルヴェニア州のとある小さな町の郊外で身元不明の奇形の嬰児の死体が発見され、FBI捜査官が世間から隔絶した家に住む異形の三人の兄弟たちを捜査していく内容となっている。家に潜入した彼らが目にしたのは、ベッドの下から這い出てきた四肢を切断された女性であり、なんと彼女は兄弟たちの母親だった。

その母親は長男と近親相姦を行なっており、他の兄弟はその行為によって誕生した子供たちであった。母親は捜査官たちに「ここは私の家(HOME)だ」と叫び、その後、捜査官たちに襲い掛かった次男と三男は始末されるも長男と母親だけは行方をくらませてしまう・・・

この回は、あまりに不快な内容であったことから現在永久に封印された回として伝説となっている。この番組の脚本家グレン・モーガンが、かつてチャップリンの自伝でカエル男の話を知った時、この逸話をなんとか形にしたいと強く考えていたという。

しかしながら、彼はチャップリンの体験談をところどころ記憶違いさせており内容が殆ど別物になってしまったことから、多くの人々はこの話がチャップリン自伝からインスパイアされたことに気付かなかったという。

近親相姦によって生まれた奇形の人間ということを題材にしていたこの回は、SF的なテーマを主に扱う本番組にしてはかなり異様とも言える内容となった。これについては、当時広まっていた近親相姦にまつわる噂などを取り入れたものであるとも言われている。

だが、チャップリン自伝で語られたカエル人間は、そのような体でありながら見世物としてでも働くことができないかを模索していた家族の姿を描いているようにも思える。チャップリンが伝えたかったことは、つらい生活の中でもなんとかその行く末を求めようと努める人間の姿を伝えようとしていたのかもしれない。

【参考記事・文献】
不快すぎてオンエアが永久に封印されたX-FILEの「HOME」は、チャップリンの自伝からインスパイアされていた
https://x.gd/jZGmJ
Xファイル 75話「ホーム」
http://blog.livedoor.jp/bad_story/archives/192510.html
『チャップリン自伝 栄光と波瀾の日々』
https://honz.jp/articles/-/44562
【Xファイルの元になった】チャップリンの奇妙な体験【The human frog】
https://x.gd/65AGS

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(ナオキ・コムロ 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)