創作の世界で、宇宙に出た人や生物が謎の成長や遺伝子の変異を起こす、というものがある。怪獣が出てくる理由付けなどに用いられることが多いが、実際にNASAの研究結果により短期の宇宙滞在でも遺伝子変容が発生する可能性が出てきて話題になっている。
スコット・ケリー宇宙飛行士は国際宇宙ステーションに340日滞在し、2016年3月に地球に帰還した。実は彼は一卵性双生児だったのだが、地球にいた兄弟とケリー宇宙飛行士のDNAを比較したところ、1年に満たない滞在記関にも関わらず双子の兄弟とは異なるDNAを持っている、との結果が科学者から発表されたのである。
ケリー宇宙飛行士とその兄弟はほぼ同じDNAを持っているため、長期的な宇宙飛行が人体に及ぼす物理的影響を比較して見ることができる。
今回NASAはケリー宇宙飛行士が宇宙でのミッションに赴く前、中、そして帰還後に血液や他の生物学的サンプルを集めて兄弟との比較検討を行った。その結果、NASAはケリー宇宙飛行士の遺伝子は宇宙から帰還した後に93%が正常に戻ったが、7%が永久に改変されてしまったとみられる結果が出たと発表した。
遺伝子が変化した場所は免疫系、DNA修復、骨形成、および組織が酸素と二酸化炭素を取り込むシステムに関連する箇所だ。
変異した理由については諸説あるが、科学者たちによるとこの遺伝子の変化は、ケリー宇宙飛行士がISS滞在中に過度のストレスに晒されていた結果であると示唆している。
また双子に関する研究を行っている、ワイル・コーネル医科大学の准教授であるクリストファー・メイソン博士は、「身体が異質なものに遭遇すると、免疫応答が活性化されることが多い」と、語っている。
原因が何であれ、NASAは今回の研究結果は今後の宇宙研究、2030年代の火星有人探査等を進めていく際に課題となるだろう、と語っている。
(飯山俊樹 山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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