作家とは、異界と接触しやすい職業なのだろうか。奇妙な体験をした経験をもつ作家は多数存在する。「ジョジョの奇妙な冒険」の作者・荒木飛呂彦には、ゴム人間を目撃したという都市伝説がある。
ここ数年、最も日本を震撼させた都市伝説の怪人は「ゴム人間」であった。元々は、タレントの的場浩司が日本テレビの番組「ダウンタウンDX」で「相模原で友人の車に乗っている時、群集の中に紛れ込んだ緑色の肌をした怪人を見た!」と発言したことから、たちまち噂が広がった。その結果、番組を観ていた視聴者によって、日本中から多くのゴム人間情報が寄せられた。
情報によると、ゴム人間にはピンクやブルーなど他の色も存在し、女性や子供・老人もいることが判明したのだ。更に、俳優の石坂浩二も「私も車を運転中、信号待ちの際にゴム人間を目撃した」と発言し、ゴム人間騒ぎが拡大していった。
こうして、ゴム人間は21世紀の新たな都市伝説となったのである。
荒木飛呂彦の目撃談はこのようなものであった。
ある日の昼間、荒木が自宅近くにある最寄り駅付近を歩いていると、奇妙な人間に出会った。大勢歩いていく歩行者たちの隙間を縫うようにして、姉と弟と思われる2人が2台の自転車で走ってきた。小学生ぐらいの2人は、自転車で追いかけっこしながら、近づいてくる。ロングヘアーにスカートをはいた姉、その後に続くジーパンとジャンパーを着た弟。
すれ違う瞬間、荒木は仰天した。
二人の肌色が緑色だったからだ。ゴムのような緑色の肌をしていたという。二人の兄弟の会話はごく普通で、肌の色が緑色という以外は変なところはない。他の歩行者もチラリと見るのだが、なぜか大騒ぎにならなかったのだという。
この奇妙な体験は、荒木自身胸の中に閉まっていたのだが、ある日、日本テレビ「ダウンタウンDX」で俳優の石坂浩二が、「私は街中で緑色のゴム人間を目撃した」と発言したのを受けて、この話を披露することになったのだという。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像『STEEL BALL RUN 16 ジョジョの奇妙な冒険 Part7 (集英社文庫 あ 41-72)』