先日、アトラスでは少し前に流行った都市伝説「赤い部屋」について紹介した。この「赤い部屋」の都市伝説はネットを中心に広まったためか、別バージョンの話が非常に多い。
今回紹介するのはまた別のパターンである。
あるタクシー運転手が、真夜中に女の客を拾った。この女が不気味な出で立ちであった。
「○○町までお願いします」
赤い服に、赤いバッグ、赤い靴に赤い口紅。上から下まで”赤い”もので身を固めている。
運転手は女のことを訝しんだが、夜中の貴重な客である。女の告げた行き先に急いだ。林道を抜けた先にその洋館はあった。えらく古い建物のようだ。
「お客さん、着きましたよ」
運転手の言葉に女は無言のまま料金を払い降りていった。
『妙な女だな』・・・運転手はハンドルにもたれかかりながらつぶやいた。女の降りた場所は、森の茂みの中の洋館の前。森の奥に赤いレンガ作りの古い屋敷が見える。
『旧家のお嬢さんか、それにしてもファッションセンスが悪いな、その上、自宅も赤いレンガ作りかよ。どういう趣味なんだ』彼は女の後ろ姿を追いながらも、こみ上げてくる好奇心を押さえきれなくなった。
『あの女、どういう生活してるんだろう』運転手はそっと、女の後を追った。女はまるで運転手の事など気にもしないで、レンガ造りの赤い洋館に消えた。
これはチャンスだ。『ようし、あの女の正体を暴いてやれ』運転手は女の消えたドアの前に立つと鍵穴から中を覗いた。すると、部屋の中が見えた。
「…んんっ!?なんだこれは」
運転手は絶句し、息を呑んだ。壁と言わず、床と言わず全てが赤い。赤い椅子に、赤いテーブル、赤い家具の数々。
「わわわわっ、なんだよこの家」
腰をぬかしドアノブから離れる運転手。まるで血を塗りたくったような部屋が自分の瞳に焼き付いている。まるでこの屋敷は、”赤い部屋”じゃないか。
すると、耳元で女がささやいた。
「赤い部屋はお好きですか?」
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)