妖怪

【実話怪談】・・・・が這い出てきた

会社の上司と、新潟に出張に行った時の事です。

取引先との打ち合わせも無事に終わり、早々に旅館に引き上げてきた私と課長は入浴し、旅館の料理に舌鼓を打ちました。その夜は酒もしこたま飲んだ私と課長はぐっすりと眠りにつきました。

深夜の事です。私は奇妙な音に目を覚ましてしまいました。何の音でしょうか・・・私は耳をすましました。

「ぎゅぎゅぎゅー」と奇妙な音が連続して聞こえます。ふと課長の方を目をやると、何やらモゴモゴと寝言なのでしょうか、言葉ではないのですが何かを言っているようなのです。なるほど、奇妙な音はどうやら課長の口から漏れていたようなのです。

えっ、歯ぎしりなのでしょうか・・・私がそう思った瞬間、課長は私の方に寝返りをうちました。

相変わらず口がモゴモゴと動いています。そのうち、その口の中から、およそ20cmぐらいの小人のようなモノが這い出て来たのです。

全身がヌメヌメと光り、ウロコのようなものが手足にはえています。ズリズリとその奇怪な生き物は課長の口から這い出るいなや、な、なんと私と視線が合ってしまったのです。

そいつはまるで「見られてしまった」と驚いたような顔をすると、大急ぎでまた課長の胎内に戻っていくではないですか。

何なんだ!コイツは?一体全体・・・私は恐怖で鼓動が一気に高まると、そのまま朝まで一睡もできませんでした。

翌朝、課長はいつも通りの様子でした。私も課長の体内に小人のようなモノが潜んでいるとはとても言えず、その日は普通に仕事をして一日を過ごしました。




帰りの新幹線での事です。課長と駅弁をパクついていると、突如課長はこんな事を言ったのです。

「最近、自分が妊娠している夢を見るんだよね」

・・・課長が妊娠しているのは、うろこのある小人です。とは、私の口からとても言えませんでした。

(聞き手:山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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