昭和34年5月27日、一人の男が死刑となった。男の名前は古屋栄雄、日本の犯罪史上でも稀にみる悲惨な殺人事件の犯人だった。
昭和29年9月6日、埼玉県の東上線新河岸駅の西にある畑や肥溜めから無惨に殺害された女性の遺体が発見された。被害者の女性は首を締められて殺害、その後カミソリで乳房と陰部が抉り取られ細切れに、両足は切断し肉が削ぎ取られるなど異常な損壊ぶりであった。そして遺体は肥溜めに沈められ、肉片は周囲の畑や草むらに蒔かれ、陰部は近くの神社の祠に捨てられていた。
被害者の女性は5日夜に青年会の打合せに出席した後、行方不明となっていた19歳女性だと判明。やがて捜査の結果、犯人である古屋栄雄が逮捕となる。だが、古屋と殺害された女性の間に接点はなかった。全くの人違いで殺害されていたのである。
古屋は事件の前にある18歳女性に一目惚れし、彼女につきまとい家に押し掛けて結婚を迫り、彼女に殺害をほのめかすような脅迫を行った。女性と家族は命の危険を感じ、女性を埼玉にいる姉のもとへ逃がした。距離をおき、時間が経てば諦めるだろうと見ていたのだ。だが、古屋は諦めず埼玉を訪れ、たまたま目に止まった女性を彼女と思い込んで惨殺したのである。
なお、古屋は捕まった後も反省する様子は見せず、「出所したら彼女を探して結婚する」と嘯いたり、被害者の家族にはバラバラ死体の絵を描いて送りつけたり、自分の家族には「ワンダフル二九ストーリー。皮二九な年。二九年に二九才の男が九月に一九娘の二九を切り二九まれた…」等という文章を送りつけるなどの卑劣な行為を繰り返していた。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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