アルィフ・ルンクは西シベリア、オビ川・イルティシ川流域に住むウラル語系民族、ハンティ族に伝わる精霊だ。
背丈が杉の木ほどもある非常に大きな魔物で、塩湖の中に住んでいるという。また、彼らはまだ大地に草も木も生えていなかった頃からいたとされている。
あるハンティ族の男が丸木船で漁をしていたところ、空がにわかにかき曇った。何事かと見上げると、大きな黒雲がオビ川を横切って飛んで行くところが見えた。
しばらくして彼の元に巨人のアルィフ・ルンクが駆け寄ってきて、「大男がここを通り過ぎなかったか」と男に尋ねた。男は黒雲ぐらいしか見なかったと答えると、アルィフ・ルンクは「あいつは俺の妻を盗んでいった。これから大地が揺れ、オビ川の水が跳ねる音がしたら俺達が闘っているのだと思え」と言って去った。
アルィフ・ルンクが去ってすぐ、大地は揺れだしオビ川の流れは荒れて、男の船は今にもひっくり返りそうになった。しかし、暫くすると揺れもおさまって、妻を取り戻したアルィフ・ルンクが戻ってくるのが見えた。
アルィフ・ルンクは男に道を教えてくれた礼だと言って、船が傾くほど多くの品物をくれたという。
(加藤文規 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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