野球漫画の巨匠・水島新司、「あぶさん」を実在の選手と思い込んでいる!?





野球漫画の巨匠・水島新司先生と言えば、昭和世代の親父連中で知らぬ者はいない存在だ。

代表的なヒット作をあげても「ドカベン」「一球さん」「野球狂の詩」「球道くん」そして「あぶさん」など多数列挙することが可能だ。文字通り野球漫画の神様である。

そんな水島先生を悲しませる事件が新潟県で平成14年ころに起こっていた。新潟市内に設置されたドカベンの像を使ったふざけた写真がネット上で広がったのだ。

水島先生の出身地でもあり、ドカベンこと山田太郎が活躍した明訓高校(漫画作品中では神奈川県の設定)と同じ名前の高校がある新潟市に、町おこしのためドカベンの主要人物像が7体か設置されていた。

中でも人気の高い、山田太郎がフルスウィングしている像の前で身体をそらせながら飛び上がり、写真撮影する不届き者が続出したのだ。

まるで山田太郎にお尻をバットで叩かれているような写真は「ケツバット写真」と呼ばれ、ネット内で瞬く間に拡散。それを真似るものが続出した。

これに気を悪くした水島先生サイドから、銅像を撤去するように市役所に要請するなど、ちょっとしたトラブルになったことがあったのだ。

たかが漫画キャラクターの話ではないかと言う人もいるが、我々水島漫画に胸を躍らせた世代にとっては、とても大切なことなのだ。我々中高年の思い出のキャラクター・山田太郎がネットの悪ふざけで使われることなど、あってはならないことである。

水島先生も同じように考えていたらしく、ある都市伝説が広がっていた。




雑誌の企画で、当時ソフトバンクホークスの監督をしていた王貞治氏と水島先生が対談することになった。

ホークスが舞台となっている水島漫画の「あぶさん」を愛読していた王氏は、ついうっかりしてこんなことを聞いてしまった。

「あぶさんはまだ現役をやっているの?」

これを聞いた水島先生の顔色が変わった。

「どれだけ、あんた、あぶさんに助けられたと思ってるの」(他の都市伝説では「あんた、自分のチームの所属選手のことも知らんのか!」と言ったというような説もある)

当時、漫画の作中ではあぶさんは還暦を超えても現役であり、それを所属チームの監督である王貞治が知らないのが許せなかったのだ。

水島先生の中では、ただの創作キャラクターでは無い。あくまで、あぶさんは実在の野球選手なのだ。

これを聞いた人々は、「水島先生は現実と創作の違いがわからない」「現実と漫画が混じり合って」と嘲笑したが、それは違う。先生の名誉のためにも反論しておく。

水島先生は、漫画のキャラクターにものすごい熱い愛を持っているのである。全て水島先生の子供なのだ。

我々水島チルドレンも同様である。山田太郎も、あぶさんも、水原勇気も、岩鬼も、殿馬も、一球さんも全て活き活きとしたリアルな野球選手なのだ。

漫画キャラに没頭して何処が悪いのか。 愛のない、随分と世知辛い世の中になってしまったものだ。

(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像『あぶさん 105 (ビッグコミックス)

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