妖怪よりも、人間のほうが恐ろしい?タブーに触れた「古庫裏婆」

 古庫裏婆は鳥山石燕の『今昔百鬼拾遺』にて紹介されている妖怪だ。

 一見、自室で食事しているだけの老婆に見えるが、彼女がおひつから取り出して口に運んでいるものは人の髪に見える。

 絵に添えられた解説文は「僧の妻を梵嫂(ぼんさう)というと『輟耕録(てつこうろく)』に書いてある」と前置きした後に、ある僧の妻だった女性の話を記している。

 山中にある古寺の庫裏に住職の妻が住み着いたが、次第に檀家が供える供物や金銭を盗み、更には墓に埋葬された屍を掘り起こして皮を剥ぎ、屍肉を食うようになった。その様は三途の川にいる奪衣婆よりも恐れられた、と書かれている。




 奪衣婆はあくまで人間の罪の重さを量るために亡者から服を剥ぎ取るだけなので、生きながらにして供物や屍肉すらあさる姿は妖怪よりも恐ろしい、ということなのだろう。

 さて、文中の『輟耕録』は中国明代の随筆集で、当時の風習や創作などを集めた作品なのだが、この中には「食人」や「人肉レシピ」についての解説がある。石燕はこの記述を知った上で紹介したのだろうか?

 人肉食に対するタブーは古今東西存在し、現在でも「胎児料理」などの都市伝説が存在しているが、そんな当時の都市伝説を描いた妖怪だったのであろうか。

(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像 鳥山石燕 『今昔百鬼拾遺』より「古庫裏婆」

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