ここ十数年の間、インターネットや携帯による「都市伝説」の成立と流布が確認されている。つまり、インターネットによるメール交換、掲示板での情報交換や携帯電話での情報伝達が”ある種、サイバー空間の仮想共同体”に進化したのである。

 インターネットが発達したとき、コピペ行為(文章をそのままコピーペーストすること)の浸透により、都市伝説は滅びるのではないかと推測されていた。何故ならば、都市伝説は口伝による”あやふやな情報伝達”により、変容し進化するモノなのだ。つまり、コピペによる伝達が始まれば、様々なバリエーションが生まれる可能性が喪失すると思われていたのだ。

 だが、メールやBBSによる伝達により、都市伝説が滅びることはなかった。情報伝達において懸念されたコピペは行われず、サイバー空間においてにも人間はあやふやな情報伝達を行い、新たな都市伝説がサイバー空間で次々生まれることになったのだ。




 インターネット上で生まれている都市伝説に関していくつか紹介してみよう。

 ネット空間を移動し、最後はモニターから這い出てくる「ネットのサダコ」、電車の中で迷惑通話をしていると、携帯本体がババァに変化する「妖怪・ケータイ婆」、死者がBBSに念で書き込みする「死者の書き込み」、幽霊が参加する「死人チャット」、「写メールに写りこむ心霊」、「死神が送りつける死の予告メール」、「見たら死ぬホームページ」、「一度はじめたら死ぬまで終わらないネットゲーム」など、サイバー空間で生まれた都市伝説は、インターネットや携帯電話の性質をうまく使った秀逸なものが多い。言ってみれば、相手の顔が見えない今風のコミュニケーションは、都市伝説とうまがあうのかもしれない。




 今や携帯電話は、全ての世代が利用しつつある。だが携帯電話の略称を”携帯”と略し、その通話機能を異界との接点にまで、昇華したのは、10代の少女たちではないだろうか。この「ハイテク都市伝説」というか「サイバー都市伝説」というか。この新しき分野においては、少女たちの巫女的役割は大きい。

 彼女たちは、携帯という依り代に「異界からメッセージ」を降臨させ、携帯そのものを妖怪たちが這い出る境界とする事に成功した。少女たちの持つ携帯は、昭和のブラウン管に踊った「魔法使い少女たち」の魔法の杖以上の威力を発揮し、世間に不思議な現象を振りまいている。

(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像©PIXABAY

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