実話怪談として聞いたことがある人もいるのではないだろうか。
つくば市公務員住宅712号の壁面には奇妙な文字が浮かび上がっていたという、ヒビとシミが作り出したその文字はまるで「姉さん」と読めることから、「姉さん」の壁と呼ばれていた。
その文字が浮き出た部屋の近くに幼い姉弟が住んでいたのだが、ある日弟は道を渡ろうとして交通事故に遭って死んでしまう。弟が姉を呼んだ最後の声が、壁に浮き出たものだと言われている。
この声は怨念のようにこの場に残っており、このシミは消しても消しても壁に浮き上がるのだという。
だが、実際に現場を調査してみると、現地近くで怪談と同様の事故は起きていない。
また、何度消しても浮き上がるというのも創作であり、実際には一回の塗り替えで消えてしまったという。
この都市伝説は長い間、実際にあったこととして語り継がれていたが、現在ではあまり聞かれなくなっている。というのも、どうやら問題の「姉さん」のシミが消えてしまい、噂にあった「実物」が無くなってしまったため、急速に噂の求心力が低下したという事のようだ。
この噂がある程度の信憑性を持って語り継がれていたのは、他ならぬ「姉さん」と読めるシミの存在があったからなのだから。
なお、問題のシミも「姉さん」と読めるような形状になってしまったのは、本当に偶然だったらしい。
当地は他にも多くの都市伝説の舞台となっている。どうやら都市伝説を生みやすい因果関係を持つ希有な土地なのかもしれない。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)