葬儀屋の夜勤体験

投稿 元葬儀屋さん

これは私が葬儀社で働いていた時に体験した話です。

人の死には昼も夜もありません、お亡くなりなられた方のご親族様の急なご不幸にも24時間体制でご対応させて頂いているのです。

葬儀社において深夜のコールセンターでは、数名の社員が当直でお客様のご不幸に対応しておりました。その日も深夜のコールセンターのお客様対応で、私の他に年配の同僚という2名で当直しておりました。どこの会社でも葬儀社と言うのは幽霊が出ると言うのは普通な事なのでしょうか、同業他社等は幽霊のでる『開かずの部屋』があるとの話も聞こえてきたりするのです。

夜も深けて事務所におりますと、事務所の外の廊下を誰かがシューズで歩くようなキュッ・・キュッ・・と時折音が聞こえてくるのはいつも事です。会社に居るのは事務所に居る私他年配同僚の2名だけ・・事務所の外の廊下を歩いている音って・・・いったい何なのか・・・。




しかし私は会社員で勤務中、しかも会社が葬儀社、そのことを考えると事務所の外から何か音が聞こえてきても確かめる気も起きません。私は年配同僚に「いつも事務所の外からシューズで歩く音が聞こえませんか?」と聞くと、年配の同僚は「そうだね、確かに聞こえるね」と答え、お互いにその音を確かめあう感じで苦笑いしておりました。

会社のビルの最上階には昔から霊がいると言われていて、まぁ、昼間でも寄り付きたい場所ではありませんし、ましてや深夜ともなると絶対に行かない場所です。同業他社では、なにやら幽霊が出るとかで開かずの部屋があると言う事も知り、葬儀業界ではそんな幽霊騒ぎ等は口にすればキリがないのでございました。

そんなことですから、事務所を出てトイレに行くときも人の居ない場所から人の気配を感じる事等は日常の事で、それを追求する事も口にする事も無いのであります。

そんな或る日に夜も更けて午前0時を回った頃の事でした。広い事務所のフロアの一角だけ電気を点け、他の場所は薄暗くしており、事務所の奥の開けっ放しのトビラの部屋等はもちろん電気は点けてないような環境で仕事をしておりますと、突然事務所の奥の部屋から怪音が聞こえてきたのです。その音ははっきりと自分の居るデスクの場所まで聞こえてきました。

私は「いよいよ怪奇現象に遭遇か」などと恐怖と冷静さが混じった異様な緊張感に襲われました。音の鳴り始めた直後に年配の同僚と顔を見合わせました。

私は年配の同僚に「ヤバイ音ですね・・音は止まりませんね」そう言いました。その直後にその年配の同僚は事務所の奥の部屋に向かってスタスタと歩き始めたので私は驚きました。

私は年配の同僚に「えっ、行くんですか?やめましょうよ」そう言いました。私は何かヤバイと感じた時は現場に近づかない方針に昔から決めているのです。何故なら、恐怖映画に出てくるわき役は必ず怪奇現象を確認しに行って殺されてしまうではありませんか。そんな影響もあって、年配の同僚に行くのを止めるように促したのですが、年配はどんどん音の聞こえる部屋へ向かうのです。私は自分をチキンな役柄だなと思いながらその年配の同僚の後を追っていきました。

年配の同僚は事務所の薄暗い奥の部屋へたどりつくと、蛍光灯のスイッチを入れました。そこで私と年配の同僚は顔を見合わせたのです。何故なら、その怪音は部屋が明るくなっても鳴り止まなかったのです。




その音は今まで数十年生きてきてどこでも聞いたことない音です。「シューボッ・・・シューボッ・・・シューボッ・・シューボッ」そんな怪音はその事務所から20メートル程度離れている私のデスクまでハッキリと聞こえるので現場で聞くとかなり大きな音です。何か人口呼吸器が酸素を送っているような音に聞こえました。

私と年配の同僚は部屋を見まわし音の原因を探しました。しかしその部屋の幾つかある内の一つの机の付近までは分かるのですが全く音源がつかめませんでした。仕方がなく私と年配の同僚は元居た場所に戻りましたが、その時点でも音が鳴りやみませんでした。

実は私は現場に行ったその時に、携帯のボイスメモで怪音を録音したのです。実際、その怪音は5分程度は鳴っていたのですが、私のボイスメモで録音したのは30秒程でした。おっ、これは非常に良い証拠が納められたと思い自分のデスクに戻り怪音を再生しますと、その怪音はしっかりと録音されておりました。

しかし、その音源を確認した直後に、この好奇心旺盛の私がその音源を自ら消去してしまったのです。それは何か得体の知れない恐怖の感情に襲われたからなのです。後で考えると何故あの時に音源を消去したのか自分でも理解できなく、何かの力によって音源が消去させられてしまったのかとも思えるものでした。

その後、気が付くと怪音は止んでおりました。当直明けにその怪音のする事務所を使用している勤続年数の長い社員に昨夜に怪音がしたと一応報告したのですが、その社員の方は退社時にプリンター等、電源は全て落として帰るし、そんな音がする様な機械は何も無いですし、過去にもその様な怪音がしたとの報告は一度もありませんとの事でしたので、私もそれ以上怪音について追及する理由もありませんでした。

あの怪音について、その後は年配の同僚と追及する事はありませんでした。葬儀社なのでいろいろあるのが普通なのだと感じていたからです。

(山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像©Julienn PIXABAY

 

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