1983年3月24日付の読売新聞に世にも奇妙な記事が掲載されている。なんと、銃で撃たれた小学1年生の女の子が撃たれ、そのまま小学校へ登校。授業を受けようとしていた、というのだ。
記事にによると、3月24日の午前7時30分頃、宮崎県のとある家庭で猟銃を使った心中事件が発生した。死んでいたのは家主の37歳男性および、36歳の妻、彼らの間にできた5歳の長男の計3名だった。
この家族は以前から夫婦仲が悪く、前の晩、旦那がホステスの車に乗って帰ってきたことに妻が腹を立て、夫婦喧嘩が始まったという。旦那は酒に酔っていたこともあり、すぐに熾烈な夫婦喧嘩となり、憤った夫は発作的に家にあった猟銃を持ち出し、妻、長女、長男の3名を猟銃で撃ってしまった。
妻および長男の二人は、頭を吹き飛ばされる即死状態で、ようやく酔いから醒めた男は自分のやってしまったことに強いショック受け、そのまま頭に銃を突きつけ自身も自殺してしまった。
この夫・妻・長男、3名の死体は翌朝7時30分頃、近隣住民が発見したのだが、どこを探しても長女A子ちゃんの姿だけが見えない。現地へ駆けつけた警察も一生懸命、行方を探したのが、A子ちゃんの姿はどこにもなく懸命な搜索が続いた。そして朝9時頃A子ちゃんの所在がようやく判明した。
A子ちゃんはなんと5キロ離れた小学校へいつものようにランドセルを背負って登校していたのである。
そして、A子ちゃんはいつものように朝8時に登校すると隣の子に、耳打ちするように「ねえ。実は私…ケガしてるの」とスカートをめくり、銃弾がめり込んだ足の傷口を見せた。A子ちゃんは銃弾が右腕を貫通、右太ももがえぐられるほどの重傷で、クラスメートは大パニック。すぐに病院へと運ばれたという。担当の教師は「A子ちゃんが怪我をしてるのは気がつかなった」と語っている。
これは都市伝説のひとつであるが、拳銃で打たれたり、刀で切られた場合でも、脳内モルヒネ(エンドルフィン)などの作用が働き、すぐには気が付かないケースがあるという。悲惨な戦場などから生きて帰ってきた人なども同じような経験があるようだ。
今回のA子ちゃんのケースも、家族が死んだことにショックを受け脳内モルヒネが異常に分泌され、自分が撃たれたことに気がつかなかった可能性は高い。またA子ちゃんが学校へいつも通りに学校へ行った理由は、精神的ショックから身を守るための防衛本能から、とっさに出た行動ではないかと考えることが出来る。
事件以上に人体の神秘さに気づかされた、そんな怪事件であった。
(文:穂積昭雪 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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