お化けは、死んでいた?!妖怪「油すまし」の墓発見?!

 九州の熊本で妖怪の墓が発見された。これは衝撃的である。
 「おばけは死なない、病気も何にもない♪」という大前提が崩れたのだ。九州を駆けめぐった妖怪の墓の伝説について解説しよう。

 大映の名作映画「妖怪大戦争」「妖怪百物語」、アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」などで活躍する妖怪「油すまし」。箕を着て、杖を振り回し大阪弁(九州妖怪なのに…?)をしゃべるヤツと言えば、思い出す方もあるだろう。
 「油すまし」の地元・熊本県栖本町にその「油すましの墓」と言われる二体の石像が現存する事が確認された。この発見は、元々有明町の有識者より、
「栖本町に「油すまし」という妖怪伝説があるらしい」と指摘され、調査したのがきっかけである。




 ちなみに、2005年には角川書店による「妖怪大戦争」のリメイクが予定され、まるで映画の復活に合わせたような「油すまし」の復活劇に地元も大いに沸いた。早速、同史跡を町文化財に指定することが、発表されたのだった。
 とりあえず、「油すまし」伝説を町が、調べて見るとびっくり、地元では、「油すましどん」と翁を慕うように呼ばれており、「油すまし」伝説の伝承者の老人も何人か確認された。実は「油すまし」とは、ある老人の伝説が誤解され、妖怪とされたのだ。
 元々この「油すまし」は、浜田隆一「天草島民俗誌」(1932年)に収録され、浜田の師匠格にあたる柳田国男の「妖怪名彙」に収録された。その後、柳田の「妖怪名彙」を見た漫画家・水木しげるが「ゲゲゲの鬼太郎」の準レギュラーに採用した事で、漫画・映画で人気を博した妖怪である。

 この「天草島民俗誌」と「妖怪名彙」の記載にはいくつか相違がある。
 浜田は「油ずまし」と濁音で記述しているが、柳田は「油すまし」と記述している。この事から、浜田の資料から、単純に柳田が転記ミスをしたのではないかと言われてきた。
 更に浜田は油びんがさがってくる怪異現象なのか、こういう妖怪が出るという伝承なのか明確に記してないが、柳田は「こういう名の怪物が出る」と妖怪=キャラ化してしまった。この事から永く研究家の間では、「すまし」という意味は不明であるが、「油ずまし」が正式名称であり、「柳田が油すましという妖怪を創った」とされてきた。

 だが、今回の調査で真相がわかりつつある。同地では「油すまし」と柳田流に住民たちは発音しているのがわかったのだ。つまり、柳田ではなく浜田が間違えていたのだ。当時の住民に、直接接触したのは浜田だから、師匠に資料を提供する時に修正伝聞した可能性はある。
 また更に浜田のミス、柳田版での修正を裏付ける証拠がある。「油すまし」の語源は、現地の言葉で「油をしぼる」意味の「油をすます」という言葉らしいからから、「油すまし」という濁らない発音が正しいのであろう。方言の発音は、現地人の発音が正しい。
 町の総務課さんに確認したところ、町の調査で様々な話がわかってきた江戸期に油絞りの名人が草積峠で行方不明になる事件があり、供養の為「油すましの墓」が建てられたと判明した。

 なお、現在の「油すまし伝説の伝承者」の一人であるW・Kさん(76才)の証言によると、子供の頃、「(油すまし名人の墓の近くの)中の門のすべりみちで遊んでいると、油すましどん(=油すまし名人の老人の霊)が出てくるぞ」と言って恐れたという。この事から、油すましは、怪異現象ではなくて、妖怪=キャラである事がわかった。「油すましどん」という言葉をみても「どん」という呼称はキャラクターでなければつかないのだ。というかモデルがいるではないか。




 そうである。柳田は、妖怪名の発音でも、キャラうんぬんの論議でも正しかったのである。
 更に、今回の事でわかった事は、非常に興味深い。妖怪の成立経過がはっきりわかった点である。
 油とり名人が峠に油をしぼる野草をとりにいき行方不明となる。死後名人の技術を慕っていた村人たちは、峠付近に供養の為「名人の墓」を建てる。必然的に油をすます名人の老人の墓なので「油すましどんの墓」と呼ばれるようになる。 勿論、油すまし(油しぼり)名人の生前の姿を知る者は墓を見るたびに名人の在りし日を思い出し、懐かしく思うが、油しぼり名人名人、つまり「油すましどん」と面識の無い、彼の死後生まれた明治~昭和初期の子供にとっては、油すましどんは謎の存在であり、墓まである怖い霊的キャラクターである。

 更に悪いことに親たちも、子供の遊び場(すべりみち)付近に「油すましどんの墓」があるので、ついつい教育・しつけに使ってしまった。
 「悪いことすると、油すましどんが出るよ」このような親のしつけの言葉から、「油すまし」が子供にとって恐ろしい妖怪的存在となり、そのうち現地の子供たちの証言が、浜田の民俗学調査資料に妖怪として採用され、浜田が柳田に伝える時、正式な発音、化け物である説明がなされたのではないだろうか。そして、漫画・映画の有名キャラとなったのだ。 

 こうして、妖怪伝説は創られるのだ!!

(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)

画像は『妖怪大戦争(DVD)』パッケージより




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