妖怪「えんべさん」は猿の骨を祀った祟り神か





この「えんべさん」は妖怪とも、神ともとれる存在であり、猿の骨を祀ったものだという。ある集落で行われていた奇習であり、昭和中期まで行われていた。

アトラスでも紹介してきた数々の呪法と合わせて考えると興味深い。「アシュラさん」「コトリバコ」「かんひも」「リヨウメンスクナ」などが主な呪法だ。

「えんべさん」の作り方はは次の通りだ。まず常温で発酵させた甘酒を造る。この時、甘酒は米粒が残るような具合が良く、あまり美味いものではないらしい。その甘酒を山中まで運び、猿をおびき寄せる。猿が甘酒を飲んでいい加減に酔っ払うと、村人で一斉に飛びついて猿を捕まえる。この時、猿を捕まえる村人はお面を被り、決して猿に顔を見られてはいけないという。

捕まえた猿は、竹籠に入れて甘酒のみで飼育する。野生の猿は、最初与えた甘酒をなかなか食べないが、空腹に耐えかね次第に口にするようになる。この甘酒で飼育しているときも、顔を見られてはならないとされる。




いい頃合いで、猿を竹籠ごと俵に詰めて地中に埋めてしまう。猿が白骨化した時期を見計らって、猿を掘り出しその骨を祀る。それが「えんべさん」だ。

新しい「えんべさん」が出来ると、古い「えんべさん」は山に返すらしい。「えんべさん」は地中から助けてもらった御礼に村を守り、村が豊作になると言われていた。しかし、この祭事を執り行っていた家の長男が太平洋戦争で戦死してからは、その効果に疑問を抱くようになり、現在では廃れてしまった。

「えんべさん」は「えーべさん」とも呼ばれ、漢字表記は不明である。「えんべさん」という発音は、「えべっさん」が転化したとも、「猿」=「えん」から来ているのではないかと推測される。ひょっとしたら、昔は猿ではなく通りがかった旅人に同じ行為をしていた可能性があるようだ。




以降は筆者の推測になるが、「えんべさん」に仕立て上げる猿に顔を見られてはならない理由は、顔を見られるとその人に激しく祟るのではないだろうか。また、猿の骨を祀る習慣は実際にあり、馬屋に猿の頭蓋骨を祀り、馬の守り神にした。日光東照宮の馬屋に「み猿、きか猿、いわ猿」があるのはこの信仰に基づくものだ。

また、別名「駒びき」と呼ばれる「河童」は、馬を川に引き込む妖怪だが、非常に猿と仲が悪い。両者が顔を合わすと死ぬまで戦いをやめないという。「河童」から馬を守るという意味においても、猿は守護神なのだろう

さらに、ある旧家に伝わる猿酒というものは、見たら死ぬと言われてきた。昭和時代にこの猿酒を見た郷土史家が死んだそいう話もある。この「えんべさん」は、この猿酒伝説をもとに創作された可能性があると思われる。

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【怪談】 「えんべさん」 ~都市伝説・怖い話朗読~【恐怖ラジオ】

(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

イメージ画像©写真素材足成

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