心残りがあって立ち去りづらい時のことを「後ろ髪を引かれる」と言う。後神はそんな時に出てくる妖怪のようだ。
後神は江戸時代の絵師、鳥山石燕の「今昔百鬼拾遺」には柳の枝に被って現れる幽霊のような姿をした妖怪として描かれている。幽霊と違うのは、後神の姿勢が表裏が真逆だという点だ。
幽霊は前に手をだらりと下げた前傾姿勢で描かれる事が多いが、後神はまるでブリッジのように体を反らせて柳の下に下がっているのだ。
顔が隠れている代わりに後頭部のつむじが強調されており、まるで後頭部に一つ目が付いているようにも見える。
絵に添えられた文には「うしろ神は臆病神につきたる神也」と書かれているため、後神も臆病神の一種なのだろう。
幽霊が出るかもしれない柳の下に、幽霊のふりをして怯える人の後ろに付き、前へと足を踏み出せなくさせる・・そんな言葉遊びから生まれた妖怪といえるだろう。
(山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)