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ファンが創り上げた幻の続編?「ドラゴンボールAF」とは

ドラゴンボールは、1984年から1995年にかけて週刊少年ジャンプに連載されていた鳥山明の漫画作品である。元々は同作者の作品『Dr.スランプ』の連載を修了する口実として連載が開始された作品であったと言われているが、その後アニメ化や様々なメディアミックス作品が展開され、日本のみならず世界な人気を誇る作品となり、全世界推計発行部数は3億分以上と言われている。

ドラゴンボールは、経済効果に影響を及ぼすほどの人気を獲得していたと言われており、出版社、アニメ制作会社、関連企業の上層部が動くほどの根回しが行なわれてやっと連載終了がなされたという逸話が残るほどであった。

こうした逸話と関連したようなドラゴンボールにまつわる都市伝説もいくつか存在している。

1989年から96年まで放送されていたアニメ「ドラゴンボールZ」は、「Z」がアルファベット最後の文字であることから、連載終了を望んでいた鳥山の”最後”であるという意図が含まれていたのではないかとされており、またその続編として制作されたオリジナルストーリーのアニメ「ドラゴンボールGT」は、「GT」が鳥山の意に反した続編であったことによる「ごめんなさい鳥山先生」という意味が込められているとも言われている。

「GT」が放送終了した1997年以降、長らくドラゴンゴールの新作アニメが放送されることはなかった。しかしその一方で、1999年ごろになり「GT」の続編とされる存在がネット上にて徐々に広まることとなった。

「GT」終了後、アメリカで制作されたというそのアニメは「ドラゴンボールAF」。90年代末、ネット上に「AF」のものと思われる画像がいくつも確認されるようになった。それらの画像はコラージュやトレスとは思えず画風も公式を思わせるものであり、また、画像は紙面に印刷された絵のスキャンと見られ、画像の右下に「BRAGON BALL AF」というロゴがついていた。




だが、奇妙なことに日本では海外の同人誌ではないかと見られた一方で、アメリカでは日本で作られた続編と思っていたファンが少なくなかったという。しかも、同人誌の可能性が示唆されたもののその存在が確認されることもなく、特に、90年代末に広まり「AF」の画像として特に有名なものであった「超サイヤ人5孫悟空」についても、その出所が長らく不明なままであった。

およそ200話に近いエピソードリストが見つかっているにも関わらず、長きに渡り実体の無い正体不明の存在であった「AF」。しかし、結果として「AF」はファンによってストーリーのみが多く創り上げられ、その過程で複数のファンたちによりイラストが創作されていったものであることがわかった。

そして、特に知られていた「超サイヤ人5孫悟空」の画像については、1999年出版のスペインのゲーム雑誌に掲載された読者投稿のファンイラストであることも判明した。この投稿者はのちにコンタクトが取られ、当初はエイプリルフールの略だったのではないかと考えられた「AF」についても、彼のブログタイトルである「Alternative Future」の略であったことが判明し謎が氷解した。因みに、問題のイラストに描かれたキャラクターは、投稿者オリジナルの二次創作キャラであったという。

「AF」という存在は、実体こそなかったものの、原作やアニメシリーズが終了してもなお、続編を強く望む人々の思いが、ネットの普及が進む中で国境を越えて築き上げられた結晶であったとも言えるだろう。

後年に登場した、PS2やアーケードゲームでのドラゴンボール作品では、それまで公式に無かったキャラクター同士のフュージョンや、いくつかのキャラクターに対する変身段階の追加が実現した。これらの描写は「AF」によく見られたものであったこともあり、「AFが公式に逆輸入された」として話題になった。

ファンによる二次創作は多くの作品に見られるが、これほどに展開や設定が広く創られる存在としても、まさしく「ドラゴンボール」は象徴的作品であったと言えるだろう。

【参考記事・文献】
コアコミックスNo.183『誰も知らない人気アニメ&マンガの謎』
ドラゴンボールAF
https://x.gd/YiuL8
ドラゴンボールAF
https://x.gd/IS831
「ドラゴンボールAF」とは何だったのか振り返る
https://togetter.com/li/1422678

(ZENMAI 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

fernando zhiminaicelaによるPixabayからの画像