アトラスでは、芸人の奇人変人エピソードについて触れてきた。
後輩の口が臭いと言って呼吸を禁じた芸人や、レイプ疑惑のある芸人について報じてきたが、今回は手癖の悪い浅草芸人について書いて見たいと思う。
芸人の世界では劇場などに姿をあらわす楽屋泥棒という存在がある。
楽屋においてある財布から数枚の札を失敬する輩であるが、犯人の正体は主に劇場スタッフであったり、芸人仲間であったりするようだ。
特に昭和生まれの芸人の中には手癖の悪い人がけっこう居て、自他ともに貧困だと認める浅草のベテラン芸人Cもその一人であると以前から噂されていた。
なぜなら、そのCが劇場に入っている時に限って千札が数枚、各芸人の財布から突如消失するという怪奇事件がたびたび発生し、Cに疑惑の目が向けられるようになったからだ。
そんなCが浅草でボランティアイベントをやった時のことである。主催者から寄付金ボックスの見張り番をお願いされた。主催者やスタッフも一瞬これはヤバイのではないかと思ったが、さすがに寄付金には手をつけないと考え、Cにお金をそのまま見張らせた。
その後、寄付金ボックスを回収し金額を確認したところ、Cに預ける前と後では、ちょうど一万円札が一枚なくなっていたという。
その日の夜、ベテラン芸人Cが珍しく浅草の大衆酒場で深酒をしているを目撃されていたが、そのことを耳にした主催者は苦笑して何も言わなかったらしい。
その後もCは度々他人の金を失敬しているらしいが、盗まれた人間はCの貧乏な生活状況を知っているために素知らぬふりをしているという。周りの人間の温情ある黙認に気付かず悪事を続けるCだが、いずれ大事になるのは目に見えている。
(串田圭介 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)
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