アトラスにおいて、オカルト記事のプロデュースをしている山口敏太郎は十数年前、電車内でイケメン俳優Aの奇妙な言動を目撃したことがあるという。
ある日山口敏太郎が総武線に乗っていると、ブツブツと独り言を言っている高身長の男に気がついた。
「なんで、このオレが総武線なんかに乗らないといけないんだ」「くそう〜、段取り悪すぎるだろう」
やたらにデカい男は前かがみになって座席に座り、イラついている。その時の服装は、フワフワした素材で出来た帽子と、カバンを持っており、周囲から完全に浮いていた。
『あれっ? 俳優のAではないのか?』
Aが出ていた連続ドラマに当時ハマっていた山口敏太郎は、トップクラスの俳優が電車に乗っていることに違和感を感じつつ、彼の一挙手一投足を観察し続けた。
『ロケ車が故障したか、なんかで撮影場所まで電車移動かな』
よく観察するとフワフワの素材で出来た得意な帽子はAが当時出演していたCMで被っていたのと、同じように見えた。
『しかし、気の毒だなぁ』
山口がそう思いながらAを観察していると、その視線に気がついたのか、Aが激高してこう言い放った。
「なに見てんだ。オマエ!」
「いえ、別に貴方など見てませんよ」
「なんだと!!」
山口が黙っているとAは巨大な体で威嚇するように立ち上がった。
《ぬ〜っ》
どうだ言わんばかりのAの表情。山口は無表情でAの顔を見上げた。
「なっ、なに」
怯むA。きっと、今までその巨体で相手を威圧してきたのであろう。山口が全く反応しないことに動揺したAはどうしてよいか狼狽したらしいようだ。
『体がでかいだけでヘタレだな。ドラマと一緒じゃん』
当時Aが出ていたコミカルなドラマの役柄そのままのリアクションに山口敏太郎は笑いを押し殺すに必死であった。
段々と周囲から気づかれ始めたA、騒ぎが大きくなり乗客の誰かが駅員に通報したようだ。千葉駅につくと駅員2,3名が山口敏太郎とAを取り囲んだ。 周囲からは「○○○(俳優の名前)だ」という声も飛んだ。
「ええい、オレはおまえらと違って忙しいんだ」
と喚きながらAは駅員を振り払い、千葉駅の改札に向かって逃げ出した・・・。
読者諸兄はこんなバカな俳優に騙されてはいけない。イケメンと高身長が売り物ではあるが、その実は電車や庶民を見下すイヤな奴なのだ。
(大山朱姫 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)
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