妖怪・幽霊

北九州に存在していたという心霊スポット「小人の家」

福岡県北九州市の八幡東区に建設された河内貯水池(こうちちょすいち)は、官営八幡製鉄所の増産態勢のために建設された人工湖(ダム)である。1920年代の完成以来、現役で稼働し続けており、土木学会選奨土木遺産に認定されている場所ともなっている。

当時製鉄所の土木課長であった沼田尚徳(ぬまたひさのり)が中心となり石造りで設計された河内貯水池は、着工当時は東洋一の規模であったとも言われており、8年間に渡りのべ90万人が建設に動員されながらも死亡者が一人も出ることはなかった。

その一方で、建設時での曰くが無いにも関わらず、現在貯水池やその周辺は心霊スポットとしても知られる有名な場所となっている。貯水池の南に位置する南河内橋では、橋から飛び降り自殺した女性の幽霊が深夜に現れるといった噂もあり、2007年ごろには、橋から貯水池へ飛び込み遊んでいた人物が溺れ、それを助けようと飛び込んだ人物も亡くなるという事故が発生したとも言われている。

そして、この場所にまつわるスポットとして知られるのは「小人の家」と呼ばれる廃墟だ。すでに取り壊されて今は存在していないと言われる「小人の家」は、かつて障害により脊椎が湾曲した(小人症と説明するケースもあり)芸術家がアトリエとして建てたもので、家そのものの大きさが通常のサイズの半分ほどしかなく、玄関のドアやキッチンなど家具の大きさも普通の人間の腿ほどの高さしかなかったというのだ。

さらに、ネット上で語られた話によれば小人の家の住人であった芸術家は精神を病んでおり、その家に女性を監禁していたとも言われている。

すでに取り壊されているということや、小人の家そのものを撮影した写真などがネット上でも一切見られないということから、小人の家はそれ自体が半ば都市伝説めいて語られているのが現状のようだ。一方で、昔確かにそのような建造物があったという声もあるため、曰くの真偽はさておき何かしらの建造物は実在していたのではないかという意見もある。




一説によれば、設計に携わっていた沼田がヨーロッパの土木思想を汲み、意匠を凝らしたヨーロッパ風の建造物を貯水池ほか周辺にいくつも築いていたという。あまりに美観に拘ったため、会計監査員の役人から贅沢すぎると叱責されたほどであったそうだ。それらは老朽化などに伴って朽ち果て、多くはすでに取り壊されてしまっているとのこと。

このことから、小人の家はそうした沼田による欧風建造物のうちの一つだったのではないかと推測されている。そもそもが八幡製鉄所の土地であったこともあり、一個人がその地に家を建てるというのも疑わしかったことから、充分に納得しうる説ではないだろうか。
また、フィンランドなどでは、自宅の庭に子どもの遊び場として「レイキモッキ」と呼ばれる小さな家を設ける文化が見られる。これを参考にして作られたのが、小人の家と呼ばれた建造物だったのではないかとも考えられるだろう。

余談であるが、「小人の家」と呼ばれる心霊スポットは、北九州以外にも北海道旭川市にあるという話もあるそうだ。そこは、とある公園の一角にある周囲を木で覆われた木造2階建ての異様に小さい家であるという。だが、ネット上に実際赴いたことがあるという体験が1件確認できる以外、残念ながらそれ以上の詳細な情報は見られない。

【参考記事・文献】
北九州の小人の家
https://mechaag.tumblr.com/post/692410774432432128/%E5%8C%97%E4%B9%9D%E5%B7%9E%E3%81%AE%E5%B0%8F%E4%BA%BA%E3%81%AE%E5%AE%B6
『小人の家』
https://nazolog.com/blog-entry-3998.html
北九州市(八幡東区)の怖い話
https://psychic-spot.chobi.net/Kyusyu/town_Fukuoka/Kitakyushu_Yahatahigashi-ku.html
フィンランド発!子どものための家「レイキモッキ」
https://allabout.co.jp/gm/gc/197972/
心霊スポット
https://ameblo.jp/dameodaooo/entry-11280731280.html

【文 黒蠍けいすけ】

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