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北海道と樺太をつなぐ海底坑道「宗谷トンネル」構想とは

日本の本土における最北端の地として知られる宗谷岬。アイヌ語で「磯岩の岸」を意味するソー・ヤに由来すると言われるこの地は、歴史的にも多くの役割を果たした地として知られ江戸時代の探検家間宮林蔵の偉業をたたえる立像をはじめとして多くの碑やモニュメント、施設が設けられている。

黒木真理の楽曲『宗谷岬』(1972)はのちに「みんなのうた」でもカバーされ、思い出深い曲として多くの人々に好まれた。

さて、その宗谷岬のある宗谷海峡には、「宗谷トンネル」という建造物の建設が今もなお構想のまま留められている。北海道と樺太(サハリン)を結ぶ海底トンネルであり、日露トンネルとも呼ばれる他、「シベリア鉄道の北海道延伸」と表現されることもある。

宗谷海峡に海底トンネルを建設するという構想は、稚内と樺太間を陸路で結び、ユーラシア大陸側との交易に繋げて経済的な活性化を目的とするものであるという。かつて元統一教会の教祖文鮮明が提唱した「日韓トンネル」構想が思い起こされるが、総工費10兆円はかかると言われる非現実的な日韓トンネル構想に比べて、宗谷トンネルはその工費に1兆数千億円というそこまで並外れたものではないという。

また、宗谷海峡の最深部はおよそ70メートル、直線距離にすれば43キロメートルほどで、かつ地質も双方で大きな違いが見られないことから、歴史的な難工事と言われた青函トンネルに比べればその建設は難しいものではないとも予測されている。

ただし、宗谷トンネル構想について気がかりであるのは、積極的な発言をしているのが種にロシア側であり、日本側にはあまり見られていないということだ。これについては、宗谷トンネル構想がそもそもロシア側の経済的な都合、すなわち日本へ資源を輸出したい思惑のために訴えているのではないかとの見方が強いというのも事実だ。

一方で、当然ながら好意的に受け止める意見もあり、経営悪化に陥っている宗谷本線の存続に関しては北海道と樺太の連結が不可欠になっているのではないかという見方もあり、また北方領土問題を解決する手立てとしての意義もあるのではないかとの声もある。
また、宗谷と樺太間については、トンネルの他に架橋の案も浮上したことがある。2017年には、シュワロフ副大統領によって道路と鉄道が併用される橋の建設が提案・主張されたが、この「宗谷海峡大橋」については日本側の負担での建設提案となっており、さらにこれはロシア本土と樺太を結ぶ「間宮海峡大橋」とのセット建設を前提とした提案となっている。

こちらの問題についても、ロシア側からの提案以上の日本側からの回答が特にないため、踏み込んだ議論がほぼなされていないことが容易に想像がつく。何より、現在のロシアのウクライナ侵攻による、経済制裁などの措置から両国の関係悪化もあり、これらの構想はほぼ実現の可能性を失いつつあると見て良いのかもしれない。

【参考記事・文献】
時の話題 「トンネル構想」
https://wakkanaipress.com/2019/07/17/39824/
宗谷本線の存廃は「国家的見地」で考えるべき
https://toyokeizai.net/articles/-/254690?page=3
宗谷海峡大橋で日露がすれ違う理由。日本は「大陸国家」になりたいか
https://tabiris.com/archives/soyakaikyo/
宗谷トンネル構想について
http://www.news-japan.net/article/433261471.html

【アトラスラジオ関連動画】

【文 黒蠍けいすけ】

画像 おいしいみそしる / photoAC