『男はつらいよ』伝説　寅さんと渥美清は不思議な縁でつながっていた？

車寅次郎は、山田洋二原作・監督作品『男はつらいよ』に登場する主人公。『わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯を使い、姓は車、名は寅次郎。

人呼んで、「フーテンの寅」と発します』という口上は有名であり、「寅さん」という愛称で知られている。この有名な役は渥美清がつとめた。

職業は香具師(やし)、要するに道端で商売を行なう露天商・的屋で、放浪しては前触れもなく実家のだんご屋「とらや」に帰って来る、という素行を繰り返している。

人情的なイメージは強いが、短気のため家族であろうと喧嘩を吹っ掛けたり、カタギを見下したり、時として女・子供でも暴力を振るうという、お世辞にも人間的にできているとは言い難く、作中にてとらや一家をはじめ柴又中からの評判は非常に悪い。

そうした、いわばアウトローを主人公とした作品ではあるものの、そのような人物がカタギの世間へ接触することで巻き起こる騒動を描いたものであり、アウトローそのものの世界を描いた作品とは異なっている。

しかしながら、古風な舞台から醸し出される「ふるさと」のイメージや、渥美清が演じたからこその人情味といった点が絶大な人気を呼び、こんにちに至るまで名作として語られているのも事実である。

寅さんにまつわる都市伝説はいくつか存在している。

例えば、柴又の寅さん記念館とその駅前には、寅さんの履く右側の雪駄のみの像と寅さん自体の像がそれぞれ設置されている。これが、寅さんの右の雪駄が「落ちた」という解釈から、駅前の寅さん像の左の雪駄を撫でると「落ちない」という受験生の願掛けとして発展したのだという。

また、寅さんは最後ハブに咬まれて死んでしまう、というのが都市伝説めいて語られることがある。映画では、第48作まで制作され、渥美清の死去に伴ってその後続編は制作されていないものの、そのようなラストは迎えていないことは事実だ。

実は、この寅さんの最期は映画以前のテレビドラマ版の最終回にて、ハブで一山当てようと奄美黄島にやってきた寅さんがあっけなくハブに咬まれて死んでしまうという実際に描かれたものだった。

寅さんは、テレビと映画で一貫して渥美が演じていており、そのために混同された話であることが推測できる。また、このラストには視聴者からのクレームが殺到してしまったため、これが寅さんを”生き返らせる”意味で「男はつらいよ」の映画化につながったという。

このほか、寅さんと渥美の関係に奇妙な偶然が見られるものもある。

有名なのは、柴又八幡神社の古墳から出土した、通称「寅さん埴輪」と呼ばれるものだろう。2001年、同神社の奈良時代の古墳にて第5次発掘調査が行なわれた。その際、帽子をかぶったように見える男性型の埴輪が出土し、面長ではあるものの柴又で出土したということ、そしてその様がハットをかぶった寅さんのようにも見えるということから、「寅さん埴輪」という愛称が付けられた。

また、奈良時代の葛飾地域には、「孔王部刀良」(あなほべとら)と「孔王部佐久良売」(あなほべさくらめ)と、寅さんとその腹違いの妹さくらの名前にも読める人物が実在していたことも判明。さらには、その発掘調査が行なわれた8月4日は、渥美清の命日であった。

また、江戸時代の浅草には、非人頭(被差別階級・非人のトップ)”車善七”という名の人物がいたという。正確には、非人頭をつとめた者が代々名乗った名前であり、曲芸などの大道芸で日銭を稼いでいた人々は、この車善七の管理下で商売を行なっていた。

その仕事柄の関連性や車姓から、この車善七が車寅次郎のモチーフではないかとの説も囁かれたが、公式からは「無関係」ということで偶然であるとの結論がなされている。

ところが、運命のいたずらとはおそろしいもので、初代・車善七の出身は、三河国渥美村(現在の愛知県渥美郡)という、これまた渥美清とも通じるような繋がりを見出すことができた。

【参考記事・文献】
・https://tabitotabi.exblog.jp/24985484/
・https://blog.goo.ne.jp/shigeaki0303/e/321fa2389ab85f1b1228fe5b33780e1e
・https://shiomi-senichiro.blog.ss-blog.jp/2014-01-19
・https://slowkuno.blogspot.com/2017/10/blog-post_15.html
・https://bunshun.jp/articles/-/6696#goog_rewarded

死亡説に怒りそれでも俳優のプライドを貫いた「高倉健」伝説

【アトラスラジオ関連動画】