
2017年、とある小惑星が太陽系に接近して話題になった。その名は「オウムアムア」、葉巻型で内部が燃焼していることが判明しており、太陽系外から飛来して再び宇宙のどこかへ去っていった。
従来の天体とは違う特徴を備えていたことから科学者の間でかなりの憶測を呼び、かつて惑星の一部だった小惑星説や単に奇妙な彗星という説から、水素氷山説や初めて確認された太陽系外からの恒星間天体ではないかと言われ、その起源と性質についてさまざまな説が出てきていた。
特にハーバード大学の天文学者アヴィ・ローブ氏は、2018年に「オウムアムアはソーラーセイルを動力源とする宇宙人の探査機ではないか」という仮説を提唱して話題になった。
しかし新たな研究により、不思議な小惑星オウムアムアの正体が単なる彗星であった可能性が高いことが示唆されて注目を集めている。
オウムアムアを彗星とする説は、オウムアムアが彗星に現れる特徴を示していなかったため専門家から懐疑的な見方がされていたが、2人の天文学者が新たに発表した論文にて彗星であると説明できる証拠が出てきたと発表。オウムアムアが太陽系に接近した時に見せた不自然な加速は宇宙線が氷の玉の中にあった水素を加熱し、閉じ込められたガスが放出されたものによるものと考えられている。
この論文の共著者であるダリル・セリグマン氏はプレスリリースで「オウムアムアで確認できた事象はいずれも星間彗星に起こるべきことだった」と述べ、「水素氷山などという馬鹿げた考えを持っていたが、これが最も一般的な説明だ」としている。
この研究結果は多くの人に認められつつあるが、真っ向から否定する意見も存在している。前述した「オウムアムア=地球外知的生命体の人工物」説を掲げるローブ氏はニューヨークタイムズ紙に対し、この研究の結論に納得していないと発言。
「新しい論文では彗星の尾が見えなかったにもかかわらず、オウムアムアが従来どおりの彗星だったと主張しています。これは象を見て縞のないシマウマであると言うようなものです」とまで言い切っている。また彗星の専門家であるカレン・ミーチ氏は、論文の内容を概ね支持しつつも「これで全ての疑問が『解決』するとは言いたくない」と強調。
天体から放出される水素を分光学的に検出することで「決定的証拠」を掴むことができるだろうとの見解を示している。
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