【実話怪談】荷台

玲子さん(仮名)と言う女性の体験談。彼女は供花と呼ばれるお葬式用のアレンジ花を作る仕事をしている。作るだけではなく、実際にできあがった花を葬儀場まで配送し、並べたりするのも彼女の仕事だ。

ある日、玲子さんはその年に入社したばかりの美佳さん(仮名)と言う若い女性スタッフを連れ、二人である葬儀会館へと向かった。そこで行われる通夜で飾る花を届けに行ったのだ。

無事に花を並べ終え、依頼をくれた葬儀社の許可を得て葬儀場を後にしたのは午後六時まであと少しと言う頃、秋口の日は既に暮れ始めていた。

玲子さんたちが乗って来た車は会社が所有する2トントラックで、この車の荷台は厚手のシートをかけた「幌車」と呼ばれるものであった。

彼女の務める会社では走行中荷台のふたを開けたまま走ると言う決まりがあったので、この日もその決まりに倣い、玲子さんは荷台のふたを開けたまま車を発進させ、葬儀場を後にした。

しばらくカーブの多い林道を走ることになる。と、後方から一台のオートバイがついて来ていることに気がついたが、特に気にもせず、注意して走らなくちゃ、とその時はそう思っただけであった。




やがて大きな幹線道路に出ると、目の前の信号が赤になったので玲子さんはトラックを停止させた。すると、後ろからついて来たオートバイが彼女の車に追いつき、横に並んだ。

トラックの運転席側にオートバイが停止したなと思った瞬間、オートバイの運転手が凄まじい勢いで玲子さんの座る運転席の窓を叩き始めたのだ。

フルフェイスのヘルメットをかぶった相手はどうやら男性らしい、驚いた玲子さんは何か文句でも言われるのかと青い顔で恐る恐る窓を開けると、

「何ですか?」

と相手に訊ねた。するとオートバイの運転手はヘルメット越しのくぐもった声でこう怒鳴りつけて来た。

「後ろに婆さんなんか乗せてたら、危ないだろうが!」

「…は?」

何のことかわからず訊き返そうとした時、信号が青に変わりオートバイはそのまま走り去ってしまった。

取り残された玲子さんと美佳さんは車を降りると、二人抱き合うように手を取りながらトラックの荷台を確認してみたが、もちろんそこにお婆さんの姿などはなかった。

後ろからついて来ていたオートバイの運転手には、荷台の中に、一体何が見えていたのだろうか…。玲子さんは二度とこの車両に乗ることができなくなったそうだ。

(線六本 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像: paladinsf on VisualHunt

 

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