「意味不明でただ落ち込む体験」

讃岐の白狐です。つい先日、私が香川県のJR高松駅に徒歩で向かっている時の出来事です。

時間的には午前11時半頃、暖かい日差しの中をガラス張りの駅舎に向かって昼の休憩前のまばらな人混みの中、のんびりと歩いていました。

まもなく構内に入ろうかという時、自分の進行方向に長身の白髪の男性が駅に向かって立っているのがちらりと目に入りました。私はその背後に近付いたのですが、動く気配が無かったので周りの人の流れを確認して避けようと正面に向き直った時、何故か急に心臓の鼓動が早まり視界が歪んで見えました。

私は、思わず立ち止まりましたが 私が避けようとした男性が目の前にいなくなっているのに気が付き、えっ!と目線を落とすと石のフロアの床に男性が倒れているのを確認しました。

倒れたのか!?と驚いて声を掛けようとしましたが、その倒れ方が異様で、まるでマッチ棒が倒れるように直立不動の姿勢のまま 両腕も真っ直ぐ伸ばして体の側面にくっつけ、顔面をフロアに向けたまま倒れていました。

そばを通り抜ける通行人は誰も気に留めず、足を止める人も無く、私だけが見下ろして立ち竦んでいました。

突然意識を失くしたのだろうか、無理に起こさない方が良いのではないか・・・戸惑っていると、近くでビラ配りをしていた若い男性が駆け寄ってきました。




「大丈夫ですか?立てますか?手を貸しましょうか?」

色々と声掛けをし始めましたが反応が無く。救急車を呼ぶか駅員を呼ぶかと、考えていると白髪の男性は首だけをゆっくりと私に向けて来ました。

真っ白な顔面に倒れた時の傷も赤味も見られず、皺だらけの老人は目線だけを私に向け太い声で呻き始めました。

私は思わずその場から後ずさってしまいました。その声のおぞましい響きと、黒目の無い白い憎しみに満ちた視線に恐怖し、何処かに電話を掛け始めた若いビラ配りの男性に後を委ねる形で駅舎の構内に逃げ込んでしまいました。

不思議なことは老人の声はまるで、つい1週間ほど前に妻と初めて入ったうどん屋でずっと私にしか聞こえていなかった呻き声にソックリでした。

私はガラス越しに時折後ろを振り返りながら構内の人混みに入って行きました。ところが、10mほど離れた場所で振り返った時、その気配は消えていて、駅の階段を少し登って人混みをかわして探しても倒れた老人の姿は見えませんでした。

気持ちが悪くなったので、その場所に駆け戻って見ると老人だけでなくビラ配りの男も何処にも見付けられませんでした。

駅員が駆け付ける様子も無く、救急車さえ来ていないのに2人はどこに消えたのか?

駅の構内にある書店に行く目的をあきらめ、私は駅近くの職場にそのまま帰りましたが、今でもその出来事は不思議では有ります。ところが、目の前に倒れている老人に対して逃げてしまった自分への自己嫌悪感を引きずったまま落ち込んだ気分でいます。

忘れないうちにと投稿させていただきました。

(アトラスラジオ・リスナー投稿 讃岐の白狐さん 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部 読者投稿)

画像 PIXABAY

 

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