10年以上前、すでに亡くなっていた!?「アヴリル・ラヴィーン死亡説」
- 2022/11/4
- アーバンレジェンド, サブカル, 芸能都市伝説, 都市伝説
- アヴリル・ラヴィーン死亡説, メリッサ・ヴァンデラ

ソーシャルメディアサイト「Pinterest」によれば2022年のハロウィンの仮装ネタとしてなんと有名シンガーソングライター、アヴリル・ラヴィーンが挙がっていた事が明らかになって注目を集めた。
Pinterestのハロウィン関連の検索結果はポップカルチャーをテーマにしたコスチュームが多く、『ロード・オブ・ザ・リング』や『トップガン』など、その年に公開された映画や話題になったTVなどのキャラクターが検索対象となり、トレンドになることが多いという。
そんな中、ドラマやカートゥーンのキャラクターではない、アヴリル・ラヴィーン本人が「女性のハロウィンコスチューム」の上位にランクインするのはかなり意外な事である。今年2月にニューアルバム『Love Sux』がリリースされた事も関係しているのかもしれないが、海外でなんと「アヴリル・ラヴィーン死亡説」なる都市伝説がまことしやかに囁かれ、未だに一定の支持を得ているからだとする意見もある。
2005年、海外のSNSに「アヴリル・ラヴィーンが祖父の死のトラウマから自ら命を絶ち、替え玉と入れ替わった」とする噂が浮上した。
替え玉の人物はメリッサ・ヴァンデラという名前で、もともと引きこもりぎみのアヴリル・ラヴィーンを押し付けがましいメディアから守るために雇われたのだという。そして彼女が死んでしまった後にレコード会社は代役としてヴァンデラを起用。以後、彼女がアヴリル・ラヴィーンの名でメディアに出ているというのだ。
その証拠にある時期からアヴリル・ラヴィーンの外見や声、筆跡などが変化した、と指摘する人もいる。また代役となったヴァンデラは嘘をつきたくなかったため、歌詞の中にサブリミナルなヒントを残したという説もある。
例えば”Nobody’s Home “の歌詞はアヴリル・ラヴィーンが両親の空き家で死んだことを裏付けるものだという説や、プロモーション用の写真撮影の際、彼女の手に「メリッサ」という名前が書かれていたという話も出てきている。
このような噂や憶測にさらされたスターは洋の東西を問わず数多く存在する。ポール・マッカートニー死亡説、ビヨンセはイルミナティの一員、テイラー・スウィフトはゼーナ・ラヴェイという元悪魔司祭のクローン(!?)である、などの都市伝説はかなり長く囁かれているものだ。
これらの陰謀論や都市伝説が囁かれる背景には、「強力な個人が意図的に人々を惑わすために秘密裏に活動している(はずだ)」という考え方が前提にある。
アヴリル・ラヴィーンの例ではレコード会社が彼女から産まれる大きな利益から「すり替え」という驚くべき説が生まれ、更に熱心な(陰謀論の)ファンが写真やビデオの比較、音声録音の分析などを行った。彼らが主張する「変化」は本来であればアヴリル・ラヴィーン本人の進化や変化に由来するものだったのだが、都市伝説を補強する「証拠」になってしまったのだ。
日本ではそこまで有名ではないが、「アヴリル・ラヴィーン死亡説」は定期的にネット上に現れ海外を中心に話題に上るそうだが、驚くべきことではない。TwitterなどのSNSでは偽のニュースが本物のニュースよりも急速に広まるという調査結果がある。
これは嘘のニュースの方が情報の新規性が高いため、人々が何度も共有する可能性が高いからだと考えられている。また陰謀論を信じる人々は一般的に現実についていくつかの「前提」を共有していることが研究で示されている。
それは権威に対する不信感、見かけ通りのものはないという信念、シニシズムなどで、このような考え方を抱いている人は事実よりもむしろ感情や直感に影響されやすく、「目の前にあるものは決して信用できない」という傾向にある自分の世界観に合致した情報を得ることができるため、陰謀論や都市伝説に引きつけられるのだという。
また、自分の認識する世界に「意味」を持たせたいという考えも、陰謀の特徴だという。そのため、例えば公式見解や一般的な説明が現段階では不適切、とされるときに陰謀は発生しやすい。そしていったん陰謀論が発生し流通すると、信奉者は確証的な証拠を探し、代替案を拒否する。そして信頼できる検証を伴わない非公式な情報の流通が、誤った情報を更に拡散させていくのだ。
これは実際、「死亡説」を他ならぬアヴリル・ラヴィーン自身がインタビューやソーシャルメディア上で繰り返し否定しているにもかかわらず、根強く残っているという事実によって証明されている。本人からの指摘があっても、陰謀論者はスルーしてしまうか、あるいはこれも陰謀の一部と解釈し、否定は隠蔽工作の一部と見なす。信奉者にとっては、否定こそがが関心を呼び起こし、陰謀をさらに裏付けることになってしまうのだ。
今年のハロウィーンにどんなコスチュームが選ばれるにせよ、アヴリル・ラヴィーンと、彼女が死んで偽者にすり替わったと信じている大勢のファンのことを考えることを惜しんではいけないと研究者は語る。実際、時代遅れの陰謀論と、それを信じる大勢の人々ほど不気味なものはないだろうから。
(勝木孝幸 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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