
画像 sakedon / photoAC
【百物語の妖怪「青行燈」】
今年は早くも6月から猛暑が続くが、電気が足りず節電が勧められている。そこで、少しでも涼しく夏を乗り切る為に百物語はいかがだろうか。
百物語とは、いうまでもなく日本の怪談会のスタイルのひとつだ。百物語の起源は「主君に近侍して話し相手を務めた中世の御伽衆が語った寝物語に由来する」「武家の肝試しに始まった」など様々な説があるが、 江戸時代の「諸国百物語」「御伽百物語」「太平百物語」などの怪談文学により一気に流行した。
怪談を100話語り終えると、妖怪「青行燈(あおあんどん)」が現れるとされる。青行燈の名称は、百物語の「青い薄紙を張った行燈」に由来するが、青行燈の描か方は書物によって様々だ。
画像 ウィキペディアより引用
鳥山石燕著の「今昔百鬼拾遺(こんじゃくひゃっきしゅうい)」では、青行燈は黒髪と角を持ち、お歯黒を塗った白い着物の女の姿で描かれている。
荻田安編著の怪談「『宿直草とのいぐさ」には「百物語して蜘の足を切る事」の題で、百物語の100話目を語ると、天井から巨大な手が降りてきたという記述がある。百物語の参加者の一人が手を切り付けたところ、その手は3寸(9㎝)の蜘蛛の脚に変化した。つまり、青行燈の正体は化け蜘蛛だったのだ。
鳥山石燕著「今昔百鬼拾遺」には、「鬼を談ずれば、怪にいたるといへり」「怪を語りて怪至り」という記述があり、青行燈とは特定の妖怪の名称ではなく、百物語の100話目を話して起こる怪異を称しているのではないか、といわれている。
筆者は怪談好きアイドルなどの出演者達が百物語を語るニコ生番組に出演した際、100話終わると、風の吹かない室内にも関わらず天井の照明が揺れるというポルターガイスト現象が発生した。その時に、写真を撮影するブルーのオーブのようなものが写ったが、今から思えばこれは 「青行燈」だったのかもしれない。
もしくは参加者の「何かが起きて欲しい」という集合意識が 「青行燈」のようなエネルギー体を作った可能性もあるだろう。(残念ながら、青い照明が反射した可能性も否定出来ないが)
ただし、必ずしも、最期に「青行燈」が現れるとは限らず、「天井から餅が降ってきた」「小判が降ってきた」「最期まで残った一人が立身出世した」など明るい昔話も存在する。
【「百物語」の正しいやり方】
ところで、百物語を語る上で、「正しい方法」や「絶対にしてはいけない禁忌」があるのをご存じだろうか。
寛文6年(1666年)の浅井了意による仮名草子『伽婢子(おとぎぼうこ)』などによれば、伝統的な形式は以下のようである。
●新月の夜に数人以上のグループで行う。場所はそのグループの誰かの家、3間の部屋を用いる(2間でもよい)。3部屋の配置はL字型になっていると更に望ましい。
●参加者が集まる部屋と、その隣の部屋も無灯で行う。最も奥の部屋に100本の灯心もしくは蝋燭を備え、文机の上に鏡を置く。行灯には青い紙を張る。
●参加者は青い衣をまとい、刀など武器を持ってはならない。魔よけのために刀も持ってはならない。
●怪談を1話語り終えたら、手探りで隣の部屋を通って 行灯・蝋燭のある部屋に行く。そこで灯心・蝋燭を1本引き抜いて消し、自分の顔を鏡で見てから、元の部屋にもどる。その間、グループは話を続けて構わない。
●99話で一旦辞めて、朝を待つ。朝日が昇ってから、最後の行燈・蝋燭を消す。
【「百物語」でやってはならないこと】
百物語は、必ず99話で打ち止めにしなければならない。最後の行燈、蝋燭は朝日が昇るまでに消してはならない。江戸時代の怪談文学の中には、この禁忌を破ると、妖怪・青行燈が出現し、参加者が祟られるという描写が描かれている。
100話語るのも禁忌だが、中途半端に辞めるて解散た場合も参加者に災いが及ぶ危険性があるといわれる。また、風がない場所で行うことも重要だ。風が吹いて火が消えてしまえば、その時点で百物語は成し遂げられない。
そして、百物語を行うのは新月の夜だと定められているが、行燈・蝋燭以外の光を入れではならないとされている。
【楽しく百物語を体験しよう】
日本の伝統文化でもある「百物語」。今年はホテル雅叙園が百物語に因んだイベント「和のあかり×百階段2022」を慣行したり、巷でバズっているようだ。
礼儀作法を守って行えば祟られるリスクはなく、「出世できる」という逸話もあるくらいので、是非ATLAS読者もチャレンジしてみてはいかがだろうか。
文:深月ユリア ミステリーニュースステーションATLAS
ポーランドの魔女とアイヌのシャーマンの血を受け継ぐ魔女占い師。ジャーナリスト、女優、ベリーダンサー、映画・イベントプロデューサーとしても活動
著書
「あなたも霊視ができる本 」文芸社
「世界の予言2.0 陰謀論を超えていけ キリストの再臨は人工知能とともに」明窓出版