「特別な能力」

友人とのよもやま話の一つをメールします。

コロナ渦で人混みを避けてレジャーが盛んになり、水辺の事故も増えて来そうですが、友人はその遭難者を救助する仕事に就いています。

水難の現場に到着するとボートでの捜索や、アクアラングでの捜索など色々と並行して行われるそうですが、その一つに「すばり」という道具を使って引っ掛ける捜索があるそうです。長さ30センチほどの釣り針にロープを結び付けたもので、釣り針が複数本付いているものをイメージしてもらえばいいそうです(実際のものは先がかなり丸くなっており引っ掛かりにくいそうです)。

遭難現場のなかでも都心を流れる川は全般に透明度が低く、汚泥が舞い上がり視界がきかなくなり、ダイバーの捜索は困難を極めるとのことです。そんなときにこのオ-ソドックスな「すばり」による捜索は欠かせない捜索方法で、ロープで結ばれた「すばり」を人力で川の中に何十回、何百回と投げ込み捜索するそうです。

しかし友人はベテランとなった現在でも、この「すばり」を使う現場で遭難者を救出したことはありませんでした。そんな中、ある現場で新人とペアで、この「すばり」での捜索をすることになり、しばらくすると新人君が上気した顔で「発見しました」と報告しロープを引き上げはじめたそうです。

川底には不法投棄された自転車に加え、タイヤや流木の沈んだものなどがあり、友人も新人の時はそれが分からず、遭難者と思い必死でロープを引き上げた経験があります。今回もその類いだろうと思ったものの、新人君にとって良い経験になると思い見守っていたところ、彼が引き上げたのは正に行方不明になっていた遭難者でした。

それから間もなく友人は、その新人君とペアで前回と同じような遭難現場に行くことになり、例の「すばり」で捜索を行っていると、彼はまたもや遭難者を引き上げたそうです。




川の流れは見た目以上に複雑で、水面が緩やかであっても川底の流れが早かったり、潮の干満で流れる方向が変わるなど、目撃された場所付近で早期に遭難者を見つけるのは非常に困難な事なのです。

そういった、確率の低い中でこんな偶然はありえない、新人君は恐らく遭難者が沈んでる場所が分かっていたと思うと友人は言います。傍で見ていた友人にしか分かり得ない感覚なのでしょう。

しかし今は新人君がこの能力を自ら表に出すことはないだろうと言うのです。今の日本社会で、組織の中に身を置く新人の彼が、その規則を破り、彼の特別な能力に基づいて勝手な行動をとれば、特に結果がでなかった場合、奇異で不適合な存在とされ、自身が不利益を被ることが分かっており、今は組織の定める規律や規則の範囲内でしか能力を発揮できないだろうとのことでした。

このようなケースでは遭難者が助かる確率はかなり低く、そのまま行方不明になることも少なくないなかで、ご遺体をご遺族の元に早い段階で帰すことができたのがせめてもの救いだと、友人は言います。

その後、友人は異動となり新人君とペアで遭難の現場に行く機会はなくなったそうですが、新人君のような特別な能力が堂々と使えるような社会になれば助かる命も増えるのではと呟いていました。

【お便り】タイの呪いの人形、水難事故の遺体捜索 ATL3rd 197

(アトラスラジオ・リスナー投稿 じぃじ2号さん ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像 wal_172619 / PIXABAY
 

 

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