
魔女裁判と言えば中世ヨーロッパ各地で行われたものが有名だが、時代が下って17世紀のアメリカでも起きていた。悪名高いセイラム魔女裁判である。
3人の少女たちの証言が中心となって起こった魔女裁判は、現代では集団ヒステリーによる産物と考えられている。この事件に巻き込まれた人は約175人、村の大半の人物が魔女の疑いをかけられて訴えられた事になる。
この魔女裁判で刑が科された人の中には、現代になっても名誉回復がならなかった人物も少なくない。そして、1693年に魔女裁判で死刑判決を受けたエリザベス・ジョンソン・ジュニアもその一人だ。
彼女は判決を受けるも、その直後に当時のマサチューセッツ州知事ウィリアム・フィップスから死刑執行の猶予を与えられて何とか死刑を免れた。そして、その後1747年に亡くなったが、彼女の有罪判決はずっと残ったままだった。
それから2世紀以上が経過した1957年、マサチューセッツ州の議員たちはセイラム魔女裁判で断罪された数多くの人々の容疑を晴らす法案を可決したが、彼女の名前は恩赦を受けるべき人々のリストに載らなかった。2001年にも同様の法案が制定されたのだが、この時も同様に恩赦の対象から外れてしまったのである。
彼女には遺族や子孫がいなかったため、ずっと処遇が宙に浮いたままだったのだ。しかし昨年、マサチューセッツ州のノース・アンドーバーという町の公民科の授業で彼女の判決が取り上げられた。授業を担当したキャリー・ラピエール先生が中心となり、生徒たちがジョンソンさんの話を調べ、どのようにすれば魔女と決めつけられ、冤罪で逮捕された人に恩赦が与えられるのかを学んだのだ。
そして、生徒たちは現在州議会のダイアナ・ディゾリオ議員と協力し、ジョンソンさんの容疑を晴らす新しい法案を議会に提出している。この法案が可決されれば、ジョンソンさんは裁判で有罪になった「魔女」の中で公式に名前が明らかになった最後の一人になる見込みだ。
「犠牲者の身に起こったことを変えることはできませんが、少なくとも記録を正すことはできます」とディゾリオ議員は語っている。
(田中尚 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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