
今は不毛の地である火星は、かつて海や湖、川を持ち、我々の住む地球と非常によく似た惑星だったと考えられている。
今でこそ火星は乾燥した荒涼とした場所になっているが、科学者たちは水があった時代の証拠やその頃に火星で繁栄していたかもしれない生物の証拠が、まだ火星に残されているのではないかと考え長い間調査と研究を行ってきた。
しかし今回、新しい研究によって火星に存在したと考えられる過去の生命体の証拠の少なくとも一部は、地質学的プロセスによって消去された可能性があることが明らかになった。
粘土は岩石鉱物が水と接触して風化してできたもので、微生物の化石を保存するのにも適していることから、生命の痕跡を探す上で貴重な素材と考えられている。しかしNASAの火星探査機キュリオシティが火星の干上がった湖底にある古代の泥岩を採取したところ、粘土鉱物の含有量が予想よりも大幅に少ないものがあることが解った。
そこから科学者たちは塩水が粘土層に漏れて不安定になり、生物の潜在的な痕跡を消し去ったのではないかという仮説を立てた。
研究代表者のトム・ブリストウ氏は次のように語る。
「以前は、ゲール・クレーターの湖底で粘土鉱物の層が形成されると、そのまま何十億年もの間、形成された瞬間の状態が維持されると考えられていました。しかし、その後に発生した塩水によって粘土鉱物が分解され、岩石の記録が実質的にリセットされてしまったのです」
このプロセスは地球でも確認されるものだとブリストウ氏は述べる。
火星の古代生命体の証拠を見つけることは、我々が考えているよりもかなり難しいのかもしれない。
(飯山俊樹 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像 Space / US Department of State