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【不労長寿をもたらす物質は存在する!】

ATLAS読者はNMN(=ニコチンアミドモノヌクレチド)という物質についてご存知だろうか。

4月23日、米ワシントン大の研究グループが米科学誌サイエンスにNMNが50~70代の女性の血糖値を調整するインスリンの働きが改善する効果があるという研究を発表した。同グループはこれまで、NMNをネズミに1年間飲ませたところ、「中年太り」を抑え、老化に伴って起こる免疫や骨密度、目などの機能低下を防ぐ効果や雌のマウスの糖尿病を改善する効果が高いことも突き止めていた。

そこで、肥満があり、糖尿病になる確率が高いとされる55~75歳の閉経後の女性に研究に参加してもらい、13人にNMN、12人に偽薬を毎日10週間にわたって飲んでもらったところ、NMNを飲んだ女性は、筋肉の細胞で、インスリンの働きが25%上がった。

従来より、動物実験でのNMNによる「若返り」効果に関する研究は注目されていたがが、人で実証出来たのは画期的だ。

2015年に放送されたNHKスペシャル「NEXT WORLD:~私たちの未来~」によると、ワシントン大学とハーバード大学の研究者らはNMNに「若返り」作用があり、2045年にはNMNを使った「不老長寿薬が開発されるとだろう」という未来予測が取り上げられた。

現在の超高齢社会が抱える問題をNMNによる「不労長寿」薬が解決するのだろうか。





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【老化の仕組み】

2000年にマサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ教授と今井眞一郎教授の研究によると、人間の老化はサーチュインというタンパク質と関係性があるという。サーチュインに老化・寿命を制御する作用があるという。

サーチュイン遺伝子は、長寿遺伝子または長生き遺伝子、抗老化遺伝子とも呼ばれる。サーチュイン遺伝子の活性化により合成されるタンパク質、サーチュイン(Sirtuin)はヒストン脱アセチル化酵素であるため、ヒストンとDNAの結合に作用し、遺伝的な調節を行うことで寿命を延ばすと考えられている。

その、サーチュインを活性化するのがNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)である。NADは、あらゆる生物の臓器や組織の細胞に存在し、エネルギーを生み出す際に使われる代謝の源である。人体には7種類のサーチュインがあるが、通常は活動せず休眠していて、これを活性化させるのがNADだ。

しかし、NADは加齢に伴って減少する為に、臓器や組織の機能低下し人間は老化していく。つまり、不足したNADを補填すれば老化は抑制出来るのだ。NAD量はNADそのものを摂取しても細胞には取り込まれず、絶食や運動によって増やすことは可能だ。

そこで今井教授が目をつけたのがNMNだ。

NMNは元々ヒトや生物の体内で自然に作られている物質であり緑黄色野菜などに含まれる。母乳に含まれていて、人間が生まれて初めて摂取する栄養素の一つともいえる。NMNは人体の機能を修復する役割を担っており、摂取すると体内でNADに変換される。

NADやNADHは消化器官で90%以上が壊されてしまうが、NMNは消化器官で分解されず素早く血中内に入り込み、細胞に届けられる。

しかし、NMNは、加齢とともに徐々に減少し、50代後半で若い時の半分程度になり、さらにその後も減少していく。それこそが、人間の「老化現象」に影響するという。





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【NMNの不労長寿効果】

今井教授の研究室でマウスに1年間、NMNを投与したところ、通常のマウスに比べ、「中年太り」(体重増加)、加齢によるエネルギー代謝の低下、骨密度の低下、眼の機能低下など、多くの臓器の機能低下が著しく抑制され、明らかな抗老化作用が確認された。

更に、NMNは糖尿病に対して著しい効果があること、更にはアルツハイマーや心不全、腎不全、糖尿病などそのほかの疾患にも効果があることも明らかになった。

また、NMNはミトコンドリア活性化をもたらすが、その過程で、体内で様々な作用を起こす。例えば、細胞分裂をする際のコピーライトエラーを防ぎ、細胞の正常な分裂を促す。また、免疫力を向上させるのでり、リュウマチ症、アトピー性皮膚炎、疥癬皮膚炎、他免疫系疾患などの免疫力が弱体化することで発症する疾病も、薬を飲まずに治癒させる可能性がある。

更に骨折、傷症、筋肉損傷、筋腱損傷他の治癒スピードを上げることができ、骨そしょう症なども同様であると期待されている。

なお、研究段階だが、NMNにより加齢や慢性炎症により劣化する神経伝達回路が改善され、伝達経路の阻害されていた部分がスムーズになる可能性があるという。となると、神経回路の改善により痴呆、うつ病、アルツハイマー症候群、パーキンソン病などの疾病の改善や治癒の可能性がある。

また、脳の視床下部、下垂体への作用により各臓器が健全に活動し始め、脳を介さずに臓器同士が会話するシグナル物質の分泌が高まり、身体全体のバランスを整える作用もあるとも考えられている。

「NEXT WORLD:~私たちの未来~」によると、今後30年間で人類の平均寿命が100歳を超え、最大寿命140歳も可能になるという。人工知能 (AI) 研究の世界的権威で、シンギュラリティ(技術的特異点)の提唱者、レイ・カーツワイル氏も科学技術の飛躍的な進化によって不老不死が実現すると主張してきた。

NMNは人類の「不労長寿薬」となりえるだろうか。今後の研究に期待したい。

文:深月ユリア ミステリーニュースステーションATLAS
ポーランドの魔女とアイヌのシャーマンの血を受け継ぐ魔女占い師。ジャーナリスト、女優、ベリーダンサー、映画・イベントプロデューサーとしても活動

著書
あなたも霊視ができる本 」文芸社
世界の予言2.0 陰謀論を超えていけ キリストの再臨は人工知能とともに」明窓出版

 

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