深刻なのに意外と理解されない「生理の貧困」について

   画像©Saranya7 PIXABAY

 Twitter 上で「#生理の貧困」ハッシュタグが盛り上がり、それに男性が上から目線であれこれアドバイスすると言う 、この世の地獄が先日も発生した。

「紙ナプキンが買えないなら布ナプキンや月経カップがある(使ったこともないくせに!)」
「インドでは古布で用が済んでいる。貧乏ならそれで済ますべきだ(その状況に憤り、インドに紙ナプキンを普及させるために大活躍した実在の男性の映画『パッドマン』が世界で大ヒットしているのに!)」

 男性である私がこの問題に口を挟むのも、いかがなものかではあるのだが、それでも声をあげる能力と意思のある者が、声をあげていかなくてはならない問題なので、あえて書かせていただく。

 まず、現実についてしっかり認識しておこう。

 ある調査によると、若い女性の二割が、金銭的理由で生理用品の入手に苦労した経験があるという。衛生的でない代用品を使ったり、交換頻度を減らしたりした女性はもっと多い。例えば紙ナプキンを使った場合、毎月千円ほどの負担になるが、それすらまかなえないほど、若い女性の貧困が進んでいるのである。

 続いて「生理の貧困」に対する、虚説について反駁しておく。

「女性だけをヒイキするのか」

 女性だけが直面している困難に手を差し伸べるのである。男性はまた別の困難に直面しているのかもしれないが、それは全く別の問題である。

Women in a chrysanthemum garden, Japan.
Women in a chrysanthemum garden, Japan. / National Museum of Denmark

「昔は問題にならなかった説」について。

 昔の女性は、頻繁に妊娠・出産・授乳を繰り返していたため、生涯に五十回ぐらいしか生理にならなかったので、生理の処置が(現代と比べて)深刻な問題にならなかった。

 現在は生涯に四百五十回ぐらいなので、深刻度が違う。一時期「昔の女性は経血をコントロールできた」説が(女性も含めて!)ネットを荒れ狂ったが、人体にそんな機能はない。




Dressed for Rain
Dressed for Rain / A.Davey

 次に「貧乏なら古布を使え」説について。

 先に触れた映画『パッドマン』において、主人公はよりよい紙ナプキンを制作するため、自ら股間に動物の血の入った袋と自作の紙ナプキンを装着して実験。しかし大失敗して(血に関するタブーを犯したとされて)村を逐われる展開がある。

 市販の紙ナプキンは、膨大な実験と英知の蓄積から開発された製品であり「古布を詰めた」だけでは、経血漏れを防ぐのは難しいのである。また、生理は衛生問題でもあることを忘れてはならない。使用した古布が衛生的でなかった場合、感染症を引き起こす危険もある。実際インドでは、古布からの感染症が原因と見られる不妊症が問題になっていることが、『パッドマン』劇中でも、医師の口から語られた。

Sadness
Sadness / ezhikoff

 布ナプキンや月経カップは、確かに近年普及し始めた、優れた生理用品である。しかし紙ナプキンに比べると、(繰り返し使えるが)高価で扱いが難しく、未成年に勧められるものとは言い難い。

 そして「生理の貧困」を深刻なものにしているのが、家族の無理解である。家族に女性がいないため、生理用品の必要性が理解されないことも少なくないが、もっと深刻なのは母親によるネグレクトである。俗に『毒親』と呼ばれる母親の中には、(映画『キャリー』に見られるように)娘の性的成熟を嫌悪し、あえて生理に適切な処置を施さない者がいる。

 また、単なる親の無関心や、貧困を娘本人が慮って言い出せないケースも少なくない。学校の保健室には、たいてい生理用品が常備されているが、そのことを知らなかったり、恥ずかしくて言い出せずに困る生徒もいる。




Sunset Beauty
Sunset Beauty / NudeDevil.com

「生理の貧困」を解消するためにできることは山ほどある。学校の女子トイレに無償(か十円程度)の生理用品を配置する。(ほとんどの先進国がそうしているように)生理用品に軽減税率を適用する。すでにファミリーマートは、生理用品の二%引きでの販売を開始した。子供に生理用品を購入するためのお金を与えないことは、虐待でありネグレクトであることを周知する。そして生理をはじめとする、女性の健康問題をテクノロジーで解決しようとする試みである「FemTech」(フェムテック)も、いつか「生理の貧困」を解決するかもしれない。

 そもそも「生理の貧困」は、もっと大きな「日本の貧困」の、氷山の一角に過ぎない。この三十年で加速した日本の貧困から生まれた問題の一つなのだ。そして貧しさゆえに自分も何かを切り詰めている人々が、苦しさのあまり声をあげた人々に対し

「こっちも苦しいんだからそのくらい我慢しろ」

と口を塞ごうとする地獄が、今の日本にはあまりにも多すぎる。

 我々を分断して、真の敵に目を向けさせまいとする者たちの存在に、もう気が付いてもいい頃ではないだろうか。

(すぎたとおる ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
作者FaceBookページ:https://www.facebook.com/sugitatoru1701

********************

 

関連記事

最近の投稿

ページ上部へ戻る