画像©Wikipedia Twinings’s Lady Grey tea leaves.

皆さんのよく飲む紅茶と言えば何であろうか。中には好き嫌いが分かれるものもあるであろう。

多少癖が強いと言われる紅茶ではアール・グレイが有名である。グレイ伯爵(1764~1845年没)という意味で名付けられたこの紅茶の由来には諸説あるが、紅茶好きの彼が中国紅茶を気に入ったことからトワイニング社がベルガモットなどにより再現したとのことであった。


画像©Wikipedia 第2代グレイ伯爵チャールズ・グレイ

アール・グレイを飲みやすくするため新たに開発されたのがレディ・グレイであるが、アール・グレイは苦手でも好んで飲んでいる方もいるようだ。

ベルガモットにレモンや橙・矢車菊などをブレンドした上品で女性的な味わいである。この紅茶のネーミングに因んだ女性はご存じであろうか。

グレイ伯爵の娘っぽいニュアンスにも思えるかもしれないが、意外にも伯爵の夫人がモデルだと言われている。

グレイ伯爵には実は彼女と結ばれる以前にスキャンダルがあったのだった!デヴォンシャー公爵夫人と不倫関係になり、女児を妊ませてしまったが彼の実家に引き渡し妹という関係にしていた。

その2年後に結ばれた相手が、ポンソンビー男爵の娘であるメアリーであった。彼女との間にはなんと、16人もの子宝に恵まれた!

レディ・グレイは伯爵夫人のメアリーということであるが、もう1人有名な人物を思い浮かべた方もいるのではないだろうか。




かの有名なカクテルの名称にもされた「ブラッディ・メアリー」と呼ばれたメアリー1世が、初めて処刑したと言われているジェーン・グレイ(1537~1554年没)はなんと「レディ・ジェーン・グレイ」とも呼ばれている。

名前が紅茶の由来と見事にシンクロしていることから、本当は彼女の呼び名からとった銘柄との俗説もあるのだ。

ジェーンの母親はヘンリー8世の妹の娘であったことから、よりによってメアリー1世のいとこにあたる。サフォーク公爵の長女だったジェーンは厳格に育てられ、勉学と読書を愛する内気な少女であった。

一見優雅な少女時代を過ごしていたかのようであったが、彼女は15歳で嫁に出され地獄を見る羽目に遭ったのだった。


画像©Wikipedia 即位を要請されるジェーン・グレイ、1820年代の想像図、ギルフォードとジェーンは中央に立つ

これはノーサンバランド公爵が仕組んだ政略婚であり、その6男・ギルフォード・ダドリーが夫となった。だが最悪なことに彼が道楽好きで、親子揃って評判悪い家に嫁がされてしまったのだった。

ヘンリー8世の後に王位を継いでいたエドワード6世が不治の病の身であったため、ジェーンを王位に就けることによってダドリー家が実権を握るのが目的であったのだ!

跡継ぎ候補であったメアリー1世が王位を継いでしまうと、敬虔なカトリック信者であった彼女がプロテスタントを貶めることになってしまうという理由もあった。




プロテスタント信者であったエドワード6世は結局、ジェーンに王位を継ぎ亡くなった。グレイ家もダドリー家も同じくプロテスタントであったため好都合だったはずである。

だが恐れていたことがすぐに起きてしまった!メアリー1世の支持率が高かったため、民衆蜂起によりわずか9日間でジェーンは廃位させられてしまった。

その翌年にわずか16歳でジェーンは処刑された。メアリー1世からしてみたら身内にあたるからなのか、ジェーンがカトリックに改宗すれば命は助けるとのことであったが彼女は受け入れられず死を選んでしまったのだった・・・


画像©Wikipedia PAUL DELAROCHE – Ejecución de Lady Jane Grey (National Gallery de Londres, 1834)

イングランドで女性が王位に就いたのはジェーンが初代であったにも関わらず、実に皮肉な歴史である。

優美で上品な香りと味わいがあるレディ・グレイという紅茶は、結婚前のジェーンのような読書にふける気品ある美少女のイメージと重ねることもできそうである。

グレイ伯爵夫人の方がジェーンよりもはるかに幸せな生涯を全うしたかのようにも思えるが、結婚前のグレイ伯爵の女性関係が唯一の汚点である。

ジェーンが結婚させられたギルフォードも女性関係が奔放だったため、本当はジェーンも嫌だったはずである。

相反する人生であったかに見えた2人の女性像が紅茶の銘柄に反映しているようでもあるが、このような意外な共通点があったとも言える。

現代よりも発言力が弱かった古き時代の女性達は、貴族であっても影で忍耐し淑やかに振る舞わなければならなかった。

レディ・グレイにこのような真相が秘められているのかは定かであるまいが、イギリス淑女の女性観がにじみ出た感慨深い味わいと香りが愉しめるかもしれない。

歴史と紅茶好きな女性には、是非ともおすすめしたい代物である。

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(ふりーらいたー古都奈)

参考サイト
WOBURN ABBEY チャールズ・グレイ|紅茶アール・グレイの名前は元イギリス首相の名前から?
産経ニュース【怖い絵展】〝ブラッディ・マリー〟が最初に処刑した「イングランド初の女王」劇的、謎深まる悲劇のヒロイン…「レディ・ジェーン・グレイの処刑」 
ONLINEジャーニー 断頭台に散った、9日間の若き女王レディ・ジェーン・グレイ

 

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